■ 雷鳴に俄に戦ぐ姫女苑
( らいめいに にわかにそよぐ ひめじょおん )
( らいめいに にわかにそよぐ ひめじょおん )
同時に突風が吹いてきて、岸辺に繁茂していた姫女苑(ひめじょおん)、赤詰草(あかつめくさ)などが音を立てて一斉に靡いた。
本日の掲句は、その時の様子をそのまま詠んだ句である。「雷鳴」「姫女苑」ともに夏の季語なので、本句は季重なり。
ところで、姫女苑に似た花に「春紫苑(はるじおん)がある。「姫女苑」の名は、この花よりも小さいことから「姫」がつき、紛れを避けるために下は「紫苑」でなく「女苑」とされた。(異説あり)
ただ一般には、「姫紫苑」とされたりと一部混乱が見られる。
*季語としては、「春紫苑」が春、「紫苑」が秋となる。
尚、「春紫苑」の名は、秋に咲く「紫苑」に似ていることに由来する。紫苑は、春紫苑よりも一回り大きく、どちらかというと小菊に似る。だから、以下のように覚えると良いだろう。
紫苑(秋) > 春紫苑(春) > 姫女苑(夏)
【関連句】
① 姫女苑大き空き地を席巻す
② 総立ちで僕を迎える姫女苑
③ 姫女苑可愛く咲けば良しとする
②は、姫女苑が野原で林立している中を歩いて行った時のことを詠んだもの。沢山の姫様に迎えられる感じを想像してみた。(口語句)
③は、夏の中頃になると雑草が生い茂るが、姫女苑は小さくて可愛らしい花を咲かすので、除草されることなく、そのまま残されていることが多いことを詠んだもの。
【姫女苑の参考句】
姫女苑ことさら淡き昼の月 (窪田玲女)
オフエリアの抱く姫女苑野外劇 (伊藤いと子)
道の辺の草とし刈られ姫女苑 (山崎笙司)
江戸開府よりの石垣姫女苑 (村上秋嶺)
結界や雲の絶間の姫女苑 (上谷昌憲)