■ 小春日の橘もどき雁もどき
( こはるびの たちばなもどき がんもどき )
話はがらっと変わるが、近辺では南天(なんてん)を始めとして赤い実をつけている植物を方々でみかける。ピラカンサもその一つで、木全体を燃えるような赤い実で覆っている。
ただ、このピラカンサには、赤だけでなく橙色の実をつけるものもある。区別するために、これを和名では「橘擬き(たちばなもどき)」という。
実の色がミカン科の「橘(たちばな)」の色に似ているから、その名がついたそうだ。
*赤い実の方の和名は「常盤山査子(ときわさんざし)。
「擬き」とは、「○○に似せた」、あるいは「○○のような」という意味合いだが、悪く言えば「まがい物」「偽物」「パクリ」で、あまり嬉しい名前ではない。
そんなことをつらつら考えながら詠んだのが、本日の掲句である。下五の「雁もどき」は、調子合わせのため「もどき」つながりで使った。
尚、「橘もどき」も「雁もどき」も季語でないので、上五に冬の季語の「小春日」をおいた。
・梅擬き ・サフラン擬き ・蔓梅擬き ・石楠花擬き ・枇杷擬き ・藤擬き など
植物の名前にも、かなり適当につけられているものが多いと改めて思った。
花期は5月~6月。白色の小花を散房花序につける。果実は小さな扁球形で晩秋に橙色に熟す。拡大してみると柿の実のようにも見える。