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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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固まりてイクラの如きさねかずら 

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■ 固まりてイクラの如きさねかずら 
                                            ( かたまりて いくらのごとき さねかずら )

イメージ 1今日も植物園からの記事だが、今は花ではなく、どちらかというと果実の方が目につく。特に、この時期は赤い実が多く、なかなか区別がしにくい。

ただ、今日取り上げる「実葛(さねかずら)」は、いくつもの実が固まって球状になるので比較的に分かりやすい。

本日の掲句は、その実葛の果実をイクラに喩えで詠んだものである。その粒々がどことなく、寿司屋などでみるイクラを彷彿とさせる。実葛は秋の季語。


*イクラの軍艦巻き
イメージ 2





この果実に触発された訳ではないが、当日はたまたま回転すし店に行き、イクラの軍艦巻きも食べた。比べて見ると、実葛の方が赤味が若干強い。

尚、実葛については、食用に適さず、ほとんど味がないとのこと。



ところで、近辺で実葛を見ることは少なくなったが、万葉集の時代から愛でられていて和歌にも結構詠まれている。その中でも特に有名なのが、以下の和歌である。

   名にし負(お)はば 逢坂山(あふさかやま)の さねかづら
         人に知られで くるよしもがな    三条右大臣(藤原定方)



イメージ 3これは、小倉百人一首にも選定されている歌で、ご存知の方も多いと思うが、現代語訳では以下のようになるとのこと。(百人一首講座より引用)


 《現代語訳》
   恋しい人に逢える「逢坂山」、一緒にひと夜を過ごせる「小寝葛(さねかずら)」、
   その名前にそむかないならば、逢坂山のさねかずらをたぐり寄せるように、
   誰にも知られずあなたを連れ出す方法があればいいのに。

名にし負(お)はば】 ~という名前をもち、それに背かないなら
【逢坂山(あふさかやま)】 山城国と近江国の国境にあった山。「逢ふ」との掛詞。
【さねかずら】 つる性の植物。「小寝(さね=一緒に寝ること)」との掛詞です。
【人に知られで】 他人に知られないで
【くるよしもがな】 「くる」は「来る」と「繰る」の掛詞。繰る」は「たぐり寄せる」という意。「よし」は「方法」、「もがな」は願望。

イメージ 4まさに、人目を忍ぶ恋を詠んだ歌なのだが、1000年以上もの昔から、こういう忍ぶ恋がもてはやされたのだなと改めて思う。それが、叶わぬ純愛なのか許されぬ不倫なのかはさておき。


イメージ 6実葛は、マツブサ科サネカズラ属の常緑蔓(つる)性低木。原産地は日本、朝鮮半島、中国など。開花期は7月~8月頃。黄白色の花を咲かせる。そして、
10~11月頃に丸い集合果をつくる。

名前は、実(さね)が美しい葛(かずら)=蔓性植物という意。別名で「美男葛(びなんかずら)」とも言うが、これは、かつて武士たちが、蔓から粘液をとって鬢付け油(整髪料)に使ったことに由来する。

イメージ 5あまり見慣れないせいか実葛を詠んだ句は少ないが、以下にはネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。*「さねかずら」は、旧仮名遣いでは「さねかづら」

    【実葛等の参考句】
     地震にも耐へし玉垣さねかづら    (森田峠)
       
*玉垣:皇居・神社の周囲に巡らした垣。
     先例のかつては異例さねかずら   (池田澄子)
     さねかづら昔男に琴の音        (伊藤三十四)
     風狂の忘れものあり実葛        (喜田礼以子)
     さねかづら置かれし夜の畳かな    (水野恒彦)

イメージ 7


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