■ 端境の花壇に掃溜菊盛る
( はざかいの かだんに はきだめぎく さかる )
今日取り上げる「掃溜菊(はきだめぎく)」もその一つで、土を起こした端境期の花壇に繁茂し、5mmほどの小さな花を咲かせていた。
*端境期(はざかいき):新米と古米とが市場で入れ替わる9、10月頃。また、農産物や商品の新旧交替期。転じて物事の入れ替わりの時期。
本日の掲句は、そんな様子を見て詠んだ句である。尚、掃溜菊は季語でないが、本句では「菊」つながりで秋の季語に準じて使用している。
ところで、「掃溜菊」と聞いて、そんな花があるのかと訝しく思わた方もいるのではないだろうか。
まず、名前が何とも酷い。掃溜めとは、言うまでもなくゴミの捨て場所のこと。著名な植物学者の牧野富太郎氏が、たまたま世田谷の掃溜めで見つけ、花姿が菊に似ていたから、この名にしたそうだ。
彼らしく、まことに適当な名前の付け方だが、権威ある人が付けたので、そのまま定着し今日に至っている。序に言えば、「犬ふぐり」「野襤褸菊(のぼろぎ)」「悪茄子」なども彼が命名した。
掃溜めと言えば思い出す言葉に「掃溜めに鶴」があるが、これは、掃溜めのようなむさくるしい所に、そこに似合わぬ美しいものがあることの喩え。
そのことにかけ、かつて以下の句を詠んだ。
掃溜めの鶴ではないが吾も菊
「掃溜の鶴ほでではないが、吾も歴とした美しい菊だ」という矜持を代弁した。
その他に過去に詠んだ句としては以下のものがある。
小春日や掃溜菊咲く駐車場
11月の小春日和に、ある駐車場で見つけて詠んだ句だが、掃溜菊の花期は長く、その頃でも頗(すこぶ)る元気に咲いていた。
掃溜菊は、キク科コゴメギク属の一年生植物。原産地は熱帯アメリカで日本には1920年~1930年代に渡来して帰化。茎は2分岐を繰り返し、高さ15cm~60cm程度になる。
花期は6~11月と長い。花は、直径5mm程度の頭花で、5枚の先端が3裂する短い白色の舌状花、および多数の黄色の筒状花からなる。花姿は菊に似ており、清楚で可愛らしい感じがする。
「掃溜菊」は季語にもなっていないので詠んだ句はほとんどみられない。よって、参考句は割愛する。