■ 雨かとも思うて見れば水馬
( あめかとも おもうてみれば あめんぼう )
先週の土曜日、植物園に行った時は、3時が過ぎた頃に当たりが暗くなってきて、池面を見るといくつもの水輪ができていた。
ひょっとして俄雨かと思い近づいてみると、何匹もの水馬(あめんぼう)が池の面を滑るように泳いでおり、それが水輪を作っていたようである。
本日の掲句はそんな様子を詠んだ句である。「水馬」は「あめんぼう」「あめんぼ」とともに夏の季語。
因みに、水馬に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
水遁の術見事なり水馬
これは、水の上を涼しげに泳いでいる水馬を見て詠んだ句。水馬は、生まれながらに水の上を泳ぐ術を会得しており、実にすばしこい。
水遁(すいとん)の術とは、「水を使って遁走(逃げる)する術全般」のこと。竹筒を使って水に潜ったり、水蜘蛛(輪状の履物)を履いて水上を歩くなどの術は、忍者漫画、映画などでよく見た。
水馬(あめんぼ)は、カメムシ目アメンボ科の昆虫。体長は5mm~30mmくらい。六本の長い脚を持ち、特に中脚と後脚が発達している。脚全体には細かい毛が密生しており、水の表面張力を利用して水上を自由に移動する。
幼虫・成虫とも肉食性で、水面に獲物や死骸が落ちると、すばやく接近して前脚で捕獲し、針のように尖った口器を突き刺して体液を吸う。成虫になると羽ができ、他の水域へも移動できるようになる。
名前は、捕まえると飴のような匂いを発し、体が棒のように細いことから「飴の棒(飴ん坊)」ということで付けられた。
雨が降った後の水溜りでよくみかけるため「雨ん坊」と呼ばれるようになったという説もあるが、これは言語学的に根拠のない民間語源だとのこと。
和名の正式名は「あめんぼ」だが、俳句では「あめんぼう」と呼ぶことが多い。「水馬」は漢名をあてたもの。
別名には、水蜘蛛(みずぐも)、川蜘蛛(かわぐも)、水馬(すいば)、水澄(みずすまし)などがある。但し、現代の標準和名では、水蜘蛛は水生のクモの1種、水澄は水生甲虫の一群をいう。
水馬を詠んだ句は比較的多い。その中から分かりよいものをいくつか選定し以下に掲載した。
(過去に掲載したものを除く。)
【水馬の参考句】
松風や道の溜りに水馬 (森澄雄)
水路にも横丁ありて水馬 (瀧春一)
あめんぼう一人見てゐて日曜日 (行方克己)
水馬はじきとばして水堅し (橋本鶏二)
おのが影おさへて滑るあめんぼう (小檜山繁子)
松風や道の溜りに水馬 (森澄雄)
水路にも横丁ありて水馬 (瀧春一)
あめんぼう一人見てゐて日曜日 (行方克己)
水馬はじきとばして水堅し (橋本鶏二)
おのが影おさへて滑るあめんぼう (小檜山繁子)