■ 待ち焦がれ火照る蛍袋かな
( まちこがれ ほてる ほたる ぶくろかな )
近畿地方も6月7日に梅雨入り宣言したばかりだが、一向に雨が降らない。
向こう一週間の天気予報を見ても雨が降る気配はなく、しかも、最高気温が30℃を超える真夏日になるとのこと。
連日雨が降るのも困るが、空梅雨で暑い日が続くのもかなわない。とは言え、こればかりは、お天道様の気まぐれだから慎んで受け入れるしかない。
前口上が長くなったが、今日は「蛍袋(ほたるぶくろ)」を取り上げたい。この草花は、蛍が出る頃に咲き、釣鐘状の花に蛍を入れて遊んだことから名前がついたと言われている。(異説あり)
蛍と言えば、有難いことに近辺の疏水で見ることができる。しかし、年々少なくなってきており、今年は5~6 匹しか見てない。
それでも、5月末頃から6月初めにかけて、どこからか家族連れやカップルなどが集まってきて、疏水べりの暗闇に目を凝らす。そして、一匹の蛍が弱々しい光を発しながら、ふらふらと飛び立つとわっと歓声を上げる。
本日の掲句は、そんな蛍と蛍袋を関連付けて詠んだ句である。実際に蛍袋が蛍を待ち焦がれているかどうか分からないが、俯いて咲く蛍袋の花姿を見ると何となくそんな気がしてくる。「蛍袋」は夏の季語。
*火照る(ほてる):顔・体などが熱くなる。
因みに、蛍袋に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
まだ来ぬか蛍袋も待ち焦がれ
掲句と着想は同じで、今回は詠み方を少し変えた。どちらが良いかは、まだ判定してない。
蛍袋(螢袋とも)は、キキョウ科ホタルブクロ属の多年草で、原産地は、日本、朝鮮、中国、シベリア。5月から6月頃に大きな釣鐘状の花を下向きに咲かせる。花色には、赤紫、白などがある。
別名に釣鐘草、風鈴草、提灯花などがあるが、いずれも同名の他の植物があるので注意を要する。
蛍袋(螢袋)を詠んだ句はままあり、その中からいくつか選んで以下に掲載した。(過去に掲載したものを除く。)
【蛍袋の参考句】
夕風に蛍袋のひとかたまり (細見綾子)
雨の日の蛍袋に赤き筋 (山本洋子)
人声の蛍袋に来てやさし (高橋悦男)
逢ひたくて蛍袋に灯をともす (岩淵喜代子)
ぬくみある蛍袋のふくろかな (森田公司)