■ 一雨が恋しき様や額の花
( ひとあめが こいしきさまや がくのはな )
この寺には、それほど広くない裏庭に何株もの紫陽花が植えてあるが、毬のような花をつける西洋紫陽花の方は、まだほとんどが蕾のままだった。
ただ、額紫陽花の方は、かなり咲いていて、もう一雨降れば生き生きとした美しい姿になる様相を呈していた。
本日の掲句は、そんなことを思いつつ詠んだもの。「額の花」とは「額紫陽花」のことで、俳句独特の呼称。夏の季語になっている。
ところで、額紫陽花の名前の由来は何かというと、その花の姿にある。
すなわち、中央に小さい花が密集しており、その外側に四弁の少し大きめの花が配されている。それを「額縁」に見立ててつけられた。「萼」でないことに注意。
因みに、「額紫陽花」に関しては、過去に以下の句を詠んでる。
【関連句】
① 一輪に煌めく銀河 額紫陽花
② さながらに宇宙の花か額紫陽花
額紫陽花は、中央部に小さい花を密集させて咲かすが、その様子は、宇宙に浮かぶ銀河のようにも見える。①、②ともに、そのことに着想を得て詠んだ。
額紫陽花は、アジサイ科アジサイ属の落葉低木。日本の固有種で、球状の花をつける西洋紫陽花は、この額紫陽花を品種改良したもの。今はこちらの方を本紫陽花と呼んでいる。
花期は5月~7月。中央部の小花は両性花(真花)でよく見ると雄蕊も雌蕊もある。その周辺部の大きめの花は、萼が変化した装飾花(そうしょくか)。
似た花に山紫陽花(やまあじさい)があるが、背丈が小ぶりで、葉にうぶ毛がたくさんつき艶がないという違いがあるとのこと。(当方、まだはっきりとは識別できない。)
尚、和名の「あじさい」は、集まる様を意味する「集(あづ)」と青い花という意味の「真藍(さあい)」が結合して変化したものだと言われている。漢字の「紫陽花」は中国の別の花を指すが、万葉の昔からこの漢字があてられているとのこと。
「額の花」を詠んだ句は多く、以下には、そのいくつかを参考まで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)
【額の花の参考句】
佳肴ありゆふべ真青き額の花 (水原秋櫻子)*佳肴(かこう):酒のさかな
静けさとして有合はす額の花 (後藤夜半)
額の花ひすいの花粉葉にこぼれ (澤木欣一)
水辺より夕風の立つ額の花 (川崎展宏)
ためらひて照り出づる日の額の花 (八木林之介)
静けさとして有合はす額の花 (後藤夜半)
額の花ひすいの花粉葉にこぼれ (澤木欣一)
水辺より夕風の立つ額の花 (川崎展宏)
ためらひて照り出づる日の額の花 (八木林之介)