■ くたびれてハンカチの花しばし見る
( くたびれて はんかちのはな しばしみる )
面白い名前の植物だが、花びら(実は苞といわれるもの)が白くて大きく、ハンカチのようだということで命名されたとのこと。
毎年この時期に咲くのだが、忘れていることも多く、既に散ってしまっているのを見て残念に思うこともあった。
今回は、一通り園内を回り帰ろうとしていた時に、思いがけなく満開の場面に出会った。本日の掲句は、その時の状況を詠んだものである。
上五の「くたびれて」は、2時間近く歩き少し疲れた時だったので、その心境を表したもの。松尾芭蕉の以下の句を思い出し使用した。
草臥れて宿借るころや藤の花
*草臥れて(くたびれて)
芭蕉の旅の一コマが目に浮かぶようだが、こういう平易で軽い句は意図せずとも記憶に残る。自分が好む句の一つでもある。
*草臥れる:くたくたに疲れる。
尚、「ハンカチの木」は季語なのかどうか。調べたところ、「ハンカチの花」で夏の季語としている歳時記もあったので、本句では夏の季語として詠んだ。
因みに、「ハンカチの木」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
ハンカチの木にも花咲き夏来る
「ハンカチの木」が季語なら季重なりとなるが、初夏らしい感じの句になっているのではないかと思うがどうだろう。
「ハンカチの木」は、ミズキ科ハンカチノキ属の落葉高木。中国の四川省・雲南省付近が原産。日本に入ってきたのは1952年と比較的新しい。
広く出回るようになったのは1991年頃で、中国から苗木とタネが大量に輸入されてからだと言われている。
花期は4月下旬から5月上旬で、白く大きな2枚の苞葉に挟まれたピンポン球のようなものが花。多くの雄花と1本の雌花からなり花弁はない。
尚、花をつけるまでには10~15年ぐらいかかるらしく、花をつけたハンカチの木は、なかなか見れないそうだ。別名に、「幽霊の木」「鳩の木」などがある。
「ハンカチの木」あるいは「ハンカチの花」を詠んだ句は、さすがに少ないが、ネットでいくつか見つけたので、参考まで以下に掲載した。
【ハンカチの木(花)の参考句】
ハンカチの花降る八十八夜かな (岡田史乃)
ハンカチの花は手品師蝶つつむ (丸田余志子)
ハンカチの木のハンカチは白ばかり (坂本宮尾)
ハンカチの花散る別れの数ほどに (和気久良子)
揺れやすきハンカチの花夏は来ぬ (清水真紀子)