■ 昨晩の雨のしずくか甘どころ
( さくばんの あめのしずくか あまどころ )
「あまどころ」と聞いたとき、多分「甘味処(あまみどころ)」を思い浮かべる人も結構いるのではないだろうか。
かくいう自分も「あまどころ」が、漢字では「甘野老」と書き、植物の名前であることを数年前に知った。
その花の開花時期は、4月中頃から5月初旬で、先日ある神社の庭にひっそりと咲いているのを見た。
本日の掲句は、その時見た花の印象を詠んだものである。小さくて細長い花が、花茎に並んだ姿は、雨の滴を連想させる。「甘野老」は夏の季語。
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余談だが、「甘味処」の読みは、もともと「あまみどころ」なのだが、「甘味料」の「かんみ」から「かんみどころ」と読まれることも多いそうだ。一説では、関東は「かんみどころ」、関西は「あまみどころ」が主流だとのこと。どうでも良い話ではあるが。
甘野老は、キジカクシ科アマドコロ属の多年草。原産地はヨーロッパ、東アジア。花期は4月~5月で、釣鐘型の花を茎に並べて咲かせる。
東北地方などで古くから山菜として食べられてきたそうだが、一般にはあまり知られていない。食用とするのは若芽(春)と地下茎(秋)。
名前は、地下茎がヤマイモの一種である「野老(ところ)」に似ていて、甘味があることからついたとのこと。「野老」は根茎の太いひげ根を老人の髭に見たてた当て字。「ところ」の語源は不明。
同科同属の草花に「鳴子百合(なるこゆり)」があるが、その違いについては、ややこしいので、ここでは触れない。
「甘野老」は季語になっているものの、あまり見慣れないせいか詠まれた句は少ない。以下にはネットで見つけた句を参考までいくつか掲載した。
【甘野老の参考句】
雫切る手際宜しも甘野老 (高澤良一)
あまどころ夕日さびしくさしにけり (行方克己)
木洩れ日や影揺れ易き甘野老 (菅野昭蔵)
境界線有耶無耶にして甘野老 (佐藤文子)
道しるべともなく傾ぎあまどころ (和田暖泡)
木洩れ日や影揺れ易き甘野老 (菅野昭蔵)
境界線有耶無耶にして甘野老 (佐藤文子)
道しるべともなく傾ぎあまどころ (和田暖泡)