■ 装いは王女のごとくカラー咲く
( よそおいは おうじょのごとく からーさく )
写真のものは湿地性のもので、川や池などの水辺に生育する。だから街中ではなかなか見ることができない。
写真のカラーも植物園に作られた水路に生育しているものである。
花は、白い仏炎苞(ぶつえんほう)の中に包まれた、黄色の棒状のもの。
*仏炎苞:仏像の背後にある炎をかたどる飾りに似た苞。
本日の掲句は、そんな花姿を白い大きな襟を付けた王女になぞらえて詠んだ句である。「カラー」「海芋(かいう)」は夏の季語。
因みに、このカラーを初めて見たのは数年前だが、その時に以下の句を詠んでいる。
純白のカラーの君に横恋慕
これは、かつて「事業仕分けの女王」と呼ばれた白襟の女性議員をイメージして詠んだものである。今は党首として大層苦労しているようだが・・・。
*横恋慕(よこれんぼ):他人の配偶者、あるいは愛人に横合いから思いを寄せること。
ただ、この句では、カラーが花の名前でなく、通常の襟として取られる可能性があるので、今回、以下のように詠み直した。
横恋慕カラーの如き君なれば
カラー(和蘭海芋)は、サトイモ科オランダカイウ属(ザンテデスキア属)の球根植物。南アフリカに原種が6~8種類ほど自生している。大きく分けて、湿地でよく育つ「湿地性」のものと乾燥した土地を好む「畑地性」のものがある。
花期は5月~7月。花色は、湿地性のものは白色だが、畑地性のものには、赤、オレンジ、黄、ピンクなど多様な色の園芸品種がある。
カラーという名前は、英名 の“calla”、“calla lily”からきており、ギリシア語のカロス(美しいの意)に由来するという説、カトリックの修道女の白い襟(カラー)に似ていることからつけられたという説などがある。
俳句では、「カラー」で詠まれた句はほとんどなく、「海芋」で詠まれたものがままある。以下には、ネットで見つけた句をいくつか掲載した。
【海芋(カラー)の参考句】
万緑の墨のごとしや海芋咲き (山口青邨)
筒っぽの海芋は雨を蒐む花 (高澤良一) *蒐む(あつむ)
花びらに翳しあひつつ海芋咲く (長谷川櫂)
海芋咲き薄日まぶしき渚なる (小林信子)
落ちてゆく日にも染まらず海芋咲く (石井とし夫)
落ちてゆく日にも染まらず海芋咲く (石井とし夫)