■ 著莪の花すきなく咲ける木陰かな
( しゃがのはな すきなくさける こかげかな )
本日の掲句は、その著莪が、植物園の森の木陰で群生しているのを見て詠んだ句である。まさに隙間なく密集して咲いていた。「著莪の花」「花著莪」は夏の季語。
*「木陰(こかげ)」は、夏の季語とは、はっきりとは認められていないようである。同義の「夏木陰」「緑陰」「木下闇」は夏の季語。
ところで、密集して咲く花は八分咲きぐらいが一番美しいと言われるが、それは、満開を過ぎると萎れた花や欠けた花が目立ち始めるからである。
著莪についても、そのことは当てはまり、こちらでは4月中~下旬ぐらいが最も美しい時期であると思う。
尚、著莪の花が夏の季語なので、立夏が過ぎるまで投稿を控えてきたが、つい先頃確認したところ、かなり花が萎れて散ったものも多かった。従って、写真の方は、4月下旬のものを主に使用した。
因みに、著莪については、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 花もようエキゾチックに春のシャガ
② シャガが咲きシャガールの絵を思い出す
③ 布きれで造りし花か著莪の花
①は、花の色と模様が、中近東、北欧辺りの民族衣装をイメージさせ、そのことを「エキゾチック」と詠んだ。
②は、名前のシャガからフランスの画家シャガールを思い出したことをそのまま詠んだ。彼は、シュール(超現実的)な空想画や無意識世界のユーモアと幻想の絵、詩的な絵を描いた。シャガの花とは、何か共通点があるような、ないような。
③は、花を仔細に見た時、花弁も萼も雌蕊もみんな布きれが千切れたようになっていることに気づき詠んだ句。
著莪(射干とも書く)は、アヤメ科アヤメ属の常緑多年草。花の形はアヤメに似ており、同じ仲間であるということは十分頷ける。原産地は中国で、かなり古くに日本に渡来したとのこと。花期は3月末~5月初め。
著莪の花は、六弁の花のように見えるが、模様のある3枚は外花被(萼)、内側の先端が二つにくびれたものは内花被(花冠)。先端がひげ状になっているのが雌蕊。雄蕊は雌蕊の裏側に隠れている。
「著莪の花」「花著莪」の句は結構多く、以下にいくつかの句を選定し掲載した。(過去に掲載したものは除く。)
【著莪の花の参考句】
みよしのゝ百花の中やひそと著莪 (及川貞)
庭山や薪積みたる著莪の中 (松本たかし)
かたまつて雨が降るなり著莪の花 (清崎敏郎)
うねうねと続く著莪から例の猫 (岡田史乃)
大和には淡き交り著莪の花 (田中裕明)