■ 半咲きの寒緋桜は微妙にて
( はんさきの かんひざくらは びみょうにて )
聞くところによると、その種類は200種類とも300種類とも言われている。咲き方も一重、八重のもの、枝垂れるものなどいろいろある。
中には、変わった咲き方をするものもあるが、今日取り上げた「寒緋桜(かんひざくら)」などは一見したところ、これが桜かと戸惑うことがある。
この桜は、緋紅色の花を鐘状に下向きにつけるが、このままで満開を迎えるので聞かなければ桜とは思えない。ただ色は鮮やかな桜の紅色である。
本日の掲句は、先日行った植物園で、そんな寒緋桜を見て詠んだ句である。下五で、その咲き様を「微妙」と表現したが、それを使った理由はもう一つある。
それは、「寒緋桜」が冬の季語なのか、春の季語なのか判断が難しいということ。「寒」が付いているので、歳時記では冬の季語にしているものも多いが、実際に満開になるのは今頃で季が1-2カ月ほどずれるので悩ましい。
但し、沖縄では、桜と言えばこの「寒緋桜」のことを指す。満開も桜祭りも1月~2月頃だそうだ。だから沖縄では冬の季語で合っていることになる。尚、「寒緋桜」は沖縄では「緋寒桜」というのが通常のようで、本土では「彼岸桜(ひがんざくら)」との混同を避け「寒緋桜」と呼ばれているとのこと。
ついでに言えば、ソメイヨシノが開花する最南端は奄美大島で、沖縄では見られないとのこと。一般の桜は寒い時期を一定期間すごさないと開花しないそうで、年中暑い沖縄では開花できないそうだ。
寒緋桜は、バラ科サクラ属の落葉高木でサクラの原種の一つ原産地は台湾、中国南部。比較的耐寒性はあって関東でも育つ。
花期は1月~3月。(地方によって違う。)既述の通り、緋紅色の花を半開した鐘状に下向きにつける。仔細に見れば小輪の一重咲きで、花弁は5枚であることが確認できる。花後に赤い実がなるが、結構おいしいとのこと。
色が鮮やかで早咲きの「河津桜(かわづざくら)は、寒緋桜と大島桜の自然交配種だとのこと。
特別に「寒緋桜」あるひは「緋寒桜」を詠んだ句は少ないが、以下にネットで見つけた句を参考まで掲載する。
【寒緋桜、緋寒桜の参考句】
ここ河津緋寒桜の田舎咲き (高澤良一)
水は日を返して寒緋桜かな (永方裕子)
一幹の緋寒桜に行脚僧 (野中千秋)
咲きそむる緋寒桜の名護の町 (磯野多希)
緋寒桜ちる沖縄を終の地に (八牧美喜子)
水は日を返して寒緋桜かな (永方裕子)
一幹の緋寒桜に行脚僧 (野中千秋)
咲きそむる緋寒桜の名護の町 (磯野多希)
緋寒桜ちる沖縄を終の地に (八牧美喜子)