■ 山川の荒れ地にぞ生う仏の座
( さんせんの あれちにぞおう ほとけのざ )
本日の掲句は、その野草の一つである「仏の座(ほとけのざ)」が、ある荒れ地に大量に咲いているのを見て詠んだ句である。
今回特に意識したのは、仏教で使われる以下の言葉。
山川草木悉皆成仏
( さんせんそうもくしっかいじょうぶつ )
意味は、「山、川、草、木など心の無いものも、全て仏性を有しており、ことごとく仏になれる」というもの。
「仏性」や「成仏」とは何かについては、浅学でとても説明できないが、この言葉で注目したいのは、山、川、草、木を人間と同列に位置付けていることである。
このような考え方は、日本在来の自然神信仰(八百万の神)と外国から入ってきた仏教の融合により生まれた日本独特の思想とも言われている。
また、その思想が、日本人の心情や感性に今も深く関わっており、特に自然の移ろいを詩(うた)にする俳句の考え方などに深く通底するものを感じる。
尚、「仏の座」は春の七草の一つで新年の季語になっているが、これは本日紹介したものとは全く別のもので、キク科の小鬼田平子(こおにたびらこ)を指す。
混同を恐れてか、写真の「仏の座」は季語としては定着していないようだが、勝手ながら、ここでは春の季語に準じて使用した。
因みに、「仏の座」に関しては過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 空地ゆえほとけほっとけ仏の座
② 仏の座どの座に仏いますやら
①は、空地を我が天下とばかり咲いている仏の座を見ながら、ついつい口に出てきた言葉をつないで詠んだ句。かつて学んだ日本史では、仏教伝来の年を「ほとけほっとけ538(ごみや)さん」と覚えた。ただし、仏教伝来は552年という説もあるとのこと。
②は、これだけ沢山ある仏の座のどの座に仏がいるのかを尋ねたもの。
↓同科同属のヒメオドリコソウ(上)とのコラボ。花が非常によく似ている。
仏の座は、シソ科オドリコソウ属の一年草あるいは越年草である。花期は2 - 6月、上部の葉脇に長さ2cmほどの紫で唇形状の花をつける。白い花をつけるものもある。
名前は、その葉が仏の蓮華座にそっくりなので付けられたとのこと。別名に三階草(さんかいぐさ)がある。
「仏の座」を詠んだ句はままあるが、春の七草の「仏の座」詠んだものか、写真のものを詠んだものか判別できないので参考句は割愛する。