■ 紅梅に黄梅映ゆる古家かな
( こうばいに おうばい はゆる ふるやかな )
そう言われても梅林では黄色い梅など見たことがない。そう言われる人も多いと思うが、実のところ、黄梅は梅の名がついているが梅の仲間ではない。
白梅、紅梅は、バラ科サクラ属だが、黄梅は、モクセイ科ソケイ(ジャスミン)属の植物。花が梅に似ていること、咲く時期が同じ頃だということで、この名前になったそうだ。
梅林で見られないのは、低木であり枝垂れて咲くので、梅林には似つかわしくないためだろう。
そのことを知り、過去には以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 黄梅は梅の名あれど蚊帳の外
② 白梅紅梅別枠で黄梅
両句とも趣向は同じ。
本日の掲句は、そんな黄梅が紅梅とともに古家を飾るように花を咲かせているのを見て詠んだ句である。
上部の紅色と下部の黄色の取り合わせが、随分と華やかな雰囲気を醸し出していた。「紅梅」「黄梅」は共に春の季語。
黄梅は、既述の通り、モクセイ科ソケイ(ジャスミン)属の落葉低木。中国原産で、江戸時代初期に渡来した。花期は2月~4月。花は黄色で六弁の一重と八重のものがある。ジャスミンの仲間だが、花に香りはほとんどない。
梅のようには背が大きくならないが、枝垂れて咲く姿は華やかである。どちらかというと山吹のようにも見える。
尚、中国では旧正月(2月)頃に咲き出すので「迎春花(げいしゅんか)」という、おめでたい名前で呼ばれているとのこと。よく似た花に雲南黄梅(うんなんおうばい)があるが、黄梅の花は、これよりも一回り小さい。
「黄梅」を詠んだ句はままあり、本ブログでも何句か紹介したことがあるが、以下にはそれ以外のものを掲載した。
【黄梅の参考句】
黄梅の弾ねる風下筆洗ふ (菅裸馬)
黄梅に佇ちては恃む明日の日を (三橋鷹女)
黄梅や息きらさずに越えし山 (鷲谷七菜子)
はつとある紅梅ほつとある黄梅 (矢島渚男)
黄梅の影石に在り土に在り (依光陽子)