■ 冬川に潜りては浮く潜り鴨
( ふゆがわに もぐりてはうく もぐりがも )
京都市の東側には、平安神宮、美術館などのある岡崎公園があり、それを囲むように琵琶湖疏水が流れている。この疎水は、琵琶湖の湖水を京都市へ流すために作られた水路(疏水)で、この付近は中継地の一つで幅も広い。水を満々と湛え、流れも穏やかなので、冬になると多くの水鳥がやってくる。
その鴨が数十羽の群をなし、一羽が潜ると他の鴨がそれを追うように次々と水に潜る。暫くすると少し離れた所からぽっかりと顔を出す。夏の川であれば、暑さを凌ぎ楽しげにも見えるのだろうが、冬の川ともなると生きるのもなかなか大変だなと感じた。(多分右写真がメス、下写真で真下の一羽以外はオスだと思う。)
掲句では、当初下五を「羽白(はじろ)かな」としていたが、知らない人にはイメージできないと思い「潜り鴨」に変えた。「冬川」を季語とするが、「潜り鴨」の「鴨」も季語とみれば季重なり。
金黒羽白とは、カモ科ハジロ属に分類される鳥類。ユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季になると南下し越冬する。日本でも九州以北に越冬のため飛来し、北海道でも少数が繁殖するそうだ。
名前は、初列風切の上面に白い斑紋が入っていることで「ハジロ」といい、目の虹彩(こうさい)が黄色(金)で羽衣が黒なので「キンクロ」がつき、「キンクロハジロ」となったそうだ。外見をそのまま名前にした感じで大変覚えやすい。
湖沼、大きい河川、潟湖、内湾、河口などに大群で生息し、雑食で、水生植物、昆虫、甲殻類、軟体動物、魚類やその卵、カエルなどを食べる。羽白(鴨)の仲間には、アカハジロ、ホシハジロ、スズガモなどがいる。
尚、参考句に関しては、「冬川」を詠んだものを抽出し以下に掲載した。
冬川や菜屑流るゝ村はづれ (正岡子規)
橋朽ちて冬川枯るゝ月夜哉 (夏目漱石)
冬川やのぼり初めたる夕芥 (杉田久女)
すたれたる運河も見えつ冬の川 (河東碧梧桐)
冬川にかかりて太し石の橋 (高野素十)