Quantcast
Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

鳶も見ん糺の森の冬紅葉

$
0
0
■ 鳶も見ん糺の森の冬紅葉
       ( とびもみん ただすのもりの ふゆもみじ )
 
最近は、穏やかに晴れた冬日和が続いている。大変ありがたく、先日は久しぶりに鴨川に立ち寄った。水辺には沢山の水鳥が泳いでいたが、ふと上空を見ると、数羽の鳶(とび)が空高く飛んでいた。

イメージ 1丁度、近くにある下鴨神社の糺の森(ただすのもり)の真上の方で、紅く色づいた紅葉が見えていた。掲句は、そんな情景を詠んだ句で、肉食系の大型の鳥である「鳶」、語感に神聖なものを感じさせる「糺の森」、厳しい冬に色づく「冬紅葉」の配合を考えて作った句である。季語は「冬紅葉」で冬。

ところで、「糺の森」といった固有名詞(地名、寺社・施設名、人名など)を使う時に、どういう留意点があるのか、念のため調べてみた。比較的分かりやすく書かれていたのが藤田湘子著「新実作俳句入門」で、そこには、要点として、

① その名に普遍性があること、
② 言葉としておもしろいひびきやイメージを持
    っていること

のどちらかであると記載されていた。

①の普遍性があるとは、名前が広く知られているということのようだが、確かに知られていなければ、句の味わいようがない。ただ、自分だけの思い出として、あるいは仲間内で詠む場合は、自由に使って構わないようにも思う。逆に有名な場所であっても、行ったことがなければ、味わいようもない。

次に②の「言葉としての面白さ」であるが、事例として、以下の句が掲載してあった。
 
     事例:祖母山も傾山も夕立かな (山口青邨)
 
祖母山(そぼさん)も傾山(かたむくさん)も、九州の阿蘇山の近くにある山だそうだが、名前も聞いたことのないような山である。しかし、その山の名の響きに何かを感じさせるものがある。ただ面白いかどうかは個人差があるので要注意とのこと。

さて、話は戻って、本日の掲句で使った「糺の森」はどうだろうか。この森は、世界文化遺産にも登録されている「下鴨神社」の森である。だからそこそこ名前が知られていると想像する。また、名前には、神々の審判する=糺す(ただす)という意味があり、何か神聖なものを感じさせる。以上から上記①、②合わせ持って良しとしておきたい。

    【固有名詞を使った参考句】
      荒海や佐渡によこたふ天の川      (松尾芭蕉)
      阿蘇山頂がらんどうなり秋の風      (野見山朱鳥)
      初冬の竹緑なり詩仙堂          (内藤鳴雪)
      神田川祭りのなかを流れけり       (久保万太郎)
      淡雪の消えてしまえば東京都      (加藤楸邨)
 
イメージ 2

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

Trending Articles