■ 三日月に宵の明星二日かな
( みかづきに よいのみょうじょう ふつかかな )
思いがけないことだったので、急いでカメラを家から持ってきて何枚か写真を撮った。ただ残念なことに、写真では金星の輝きがあまり感じられない。下の写真の左端の塵のような点が、その金星である。
本日の掲句は、その時の情景をそのまま詠んだものである。中七の「宵の明星」とは、日没後、西の空に明るく輝く金星のこと。
月に金星が近づいて見える現象は、時々起こるようだが、今回は、正月の二日に起きたことを何かの吉兆と捉えたい。
尚、本句は、説明がなければ何を言っているのか分からない句だが、一つの記録の句として残すことにした。
因みに、過去にも金星が月に接近する状況に遭遇しており、以下の句を詠んでいる。
月木星金星見えて春の暮
これは、2012年2月26日に詠んだ句だが、この時は、月、木星、金星が接近して同時に見えた。何とも不思議な光景だった。
ところで、掲句では「二日」が新年の季語となるが、実は「三日」「四日」「五日」「六日」「七日」も全て新年の季語になっている。
昔は、これらの日々に特別な意味があり、いろいろな風習もあったようだが、今はその違いがあまり感じられない。
ただ、二日は家族とゆっくり過ごす元日と違って、初荷、初商、書き初めなど新しい年が動き始める日という感じがし、年が改まったことが実感される。
もっとも官庁などは、通常4日が仕事始めで、今は、この日の方がより重要な日に位置づけられると思うが。
過去に「二日」を詠んだ自句はないが、一般的にはよく詠まれている。その中から何句か選んで以下に掲載した。
【二日の参考句】
元日二日京のすみずみ霞みけり (与謝蕪村)
常のごと二日の客の裏戸より (高浜虚子)
二日暮れ今年も二日たちにけり (富安風生)
沖かけて波一つなき二日かな (久保田万太郎)
腹の上に猫のせてゐる二日かな (行方克己)
*三日には火星も右斜め下に接近して見えたが、小さすぎて写真では確認できなかった。