■ 百合鴎 二句
○ 百合鴎北に向かって並びおり
( ゆりかもめ きたにむかって ならびおり )
○ 飛び立てばへの字が躍る百合鴎
○ 飛び立てばへの字が躍る百合鴎
( とびたてば へのじがおどる ゆりかもめ )
昨日(1月5日)は二十四節気の「小寒(しょうかん)」で「寒の入り」という。
この日から立春の日の前日までの約30日間を「寒中」「寒の内」と言い、一年で最も寒い時節とされている。
だからという訳ではないと思うが急激に寒くなった気がする。
そんな昨日の昼頃、たまたま鴨川の近辺を通ったが、いつにも増して多くの百合鴎(ゆりかもめ)が川中にたむろしていた。
百合鴎は、全身が白いので一帯が白くなり薄っすらと雪が積もったように見える。その百合鴎が並んで北方を向き、水面に浮かんでいるのが印象的だった。
本日の第一句は、そんな様子を詠んだ句である。「百合鴎」は冬の季語。
第二句は、その百合鴎が突然一斉に飛び立った様子を見て詠んだ句である。羽ばたきがへの字になって幾重にも重なり動く様子は、なかなかに迫力がある。
因みに、「百合鴎」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① ゆりかもめ渡る世界も寒々し
② 雪ん子のごとき顔して百合鴎
①は、「北国はもっと寒いのだろうが、渡ってきた世界(京都)も非常に寒い。」と詠んだもの。
②は、特に百合鴎の顔や姿に注目し、それを「雪ん子」に喩えて詠んだもの。「雪ん子」とは「子供の姿をした雪の精」のこと。よく見ると少しとぼけた愛らしい顔をしている。
百合鴎は、カモメ科の鳥で全長30センチ~40センチ。くちばしと脚が赤く、冬羽は全体に白いが夏羽になると頭部が黒褐色になる。日本では冬鳥として、秋ごろ北海道から南西諸島まで広く渡来して越冬し、春、北方に去りそこで繁殖する。
鴨川の百合鴎は、琵琶湖を塒(ねぐら)とし、餌場として鴨川にやってくる。その姿を見せるようになったのは、まだ新しく1974年以降だそうだが、今では、当地の冬の風物詩となっている。
百合鴎の語源については、①百合の花のように美しい、②「入江かもめ」が転じた、③奥地を意味する「ゆり」から派生したなど諸説あるが、いずれも定説になっていない。個人的には、百合の花のように清楚な感じがするので①説をとりたいと思う。
「百合鴎」「ゆりかもめ」を詠んだ句はままある。以下にはネットで見つけた句をいくつか掲載した。
【百合鴎等の参考句】
流れつつ夕日の華やゆりかもめ (千代田葛彦)
放浪の胸ゆたかなる百合鴎 (原田喬)
ゆりかもめ翔ちたる一羽舞ひ戻る (阿部美恵子)
ゆりかもめ胸より降りて来たりけり (井上弘美)
吹かれつつ水掻き浮けり百合鴎 (森山英子)