■ 我が庭に飛来の南天赤極む
( わがにわに ひらいのなんてん あかきわむ )
実のところ、野草だけでなく樹木も何種か根付いて今も生長している。その一つが本日取り上げた「南天(なんてん)」。
種や苗を植えていないので、多分鳥が落としていった実か、風が運んできた実が発芽したものと思う。
それが、今では1mを超えるほどに大きくなって、昨年あたりから花を咲かせ、赤い実を鈴なりにつけだした。特に今年はその赤が際立っているような気がする。
本日の掲句は、その様子を詠んだ句。下五で使った「極む」は、「極限に到達させる。きわめる。」の意。
尚、「南天」「実南天」「南天の実」は冬の季語。(秋の季語とするところもある。)「南天の花」「花南天」は夏の季語。
因みに、「実南天」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 実南天難多ければたわわなり
② 実南天葉ももみづれば赤尽くし
③ シロップのごとき滴や実南天
①は、どの家にも南天が植えてあるのを見て、「世の中には難が余程多いのだろう。実南天があんなにたわわに実っている。」と詠んだもの。「南天」は、音が「難を転ずる」に通じることから、縁起の良い木とされ、鬼門または裏鬼門に植えると良いなどという俗信がある。
②は、基本的に常緑である南天の葉が真っ赤に紅葉しているのを見て詠んだ句。「もみづれ」は、古語の「もみづ(紅葉づ)」の已然形。
③は、南天の赤い実が雨に打たれ、透明なシロップをかけたようになっているのを見て詠んだ句。
南天は、メギ科ナンテン属の常緑低木。中国原産。初夏に白い花が咲かせ、晩秋から初冬に赤色の果実をつける。名前は、漢名の「南天燭」(赤い実を灯と見立てた)に由来している。
縁起が良い木だということで、江戸時代には一大南天ブームが起こり、実の色や葉の色などの違う品種が120種以上ほどあったとのこと。しかし、その後ブームが去って現在では40種ぐらい。
今もよく知られているものに、白い実をつける「白実南天」、オレンジ色の「うるみ南天」、実がならず葉色が変わる「お多福南天」などがある。
「南天」「実南天」を詠んだ句は非常に多い。以前に何句か紹介したことがあるが、以下には、それ以外のものを掲載した。
【実南天等の参考句】
南天の実をこぼしたる目白かな (正岡子規)
南天やまた人知れずしぐれかけ (久保田万太郎)
事小康葉が多すぎる南天に (中村草田男)
赤き実を垂りて南天提げ帰る (山口誓子)
お座敷の中も寒くて実南天 (岸本尚毅)