■ 伝えたきことあればこそ蔦紅葉
（ つたえたき こと あればこそ つたもみじ ）
ただ、絡まるもの、張り付くものによっていろいろな形になり、しかも色づき方も一様ではない。時には、思いもよらぬ美しい光景を作る。
先日行った植物園でも、その蔦が事務所の壁に面白い模様を描いていた。それを見て感じたことをどう表現するか。いろいろと考え最初にできたのが以下の句。
伝えたきことありて描くのか蔦紅葉
（か）
「蔦紅葉があのような模様を描くのは、何か伝えたいことがあるからだろう。きっとそうに違いない。」というのが句意。
但し、音数に拘らない自由律句であれば、これでも成立するような気がするが、一応五七五定型句を基本としているので、もう少し音数を減らさなければならない。そう思って検討し、最終的にできたのが本日の掲句である。
果たしてこれで自分の感じたことが伝わるかどうか。些か心許ない。「蔦紅葉」は秋の季語。
因みに、「蔦紅葉」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 白壁のカフェに絡まる蔦紅葉
② シャンソンを奏でる如く蔦紅葉
③ 街に出てさみしくないか蔦紅葉
①は、ある洋館造りの喫茶店の白壁に絡まる蔦が、美しく紅葉しているのをを見て詠んだ句。
②は、真っ赤に紅葉した蔦が、あるレストランの前の土塀に楽譜のような模様を形成し、シャンソンを奏でているように見えたことを詠んだ。
③は、蔦の「つた」から「伝える」を連想して作った句で、さだまさしの「案山子」のワンフレーズを引用したもの。
蔦は、ブドウ科ツタ属のつる落葉低木。夏に小さい黄緑色の地味な花が咲かせ、秋に黒紫色のぶどうに似た実をつけるが、両方とも目立たない。葉の方が好まれ、夏は緑のカーテンとして、秋は艶やかな紅葉が愛でられる。
漢字の蔦は、地上に繁殖する"草"と空を翔ける"鳥"とを組合わせた文字で、生命力の強い縁起の良い植物という意味が込められているとのこと。
「蔦紅葉」を詠んだ句は多く、本ブログでも何句か紹介したことがあるが、以下ではそれ以外のものを掲載した。
【蔦紅葉の参考句】
色かへぬ松のはれ着や蔦紅葉 （高井几董）
石門や蔦紅葉してぶら下る （寺田寅彦）
玉川や蛇籠を這へる蔦紅葉 （鈴木花蓑） ＊蛇籠（じゃかご）
濃く淡くひるがへりつつ蔦紅葉 （阿波野青畝）
白壁をキャンバスにして蔦紅葉 （大澄利江）