■ 短日の蕎麦屋のそばに姫蔓蕎麦
( たんじつの そばやのそばに ひめつるそば )
最近、金平糖のようなピンクの丸い花で、道端や壁際を覆っている植物をよく見かける。名は「姫蔓蕎麦(つるひめそば)」。
蓼(たで)の仲間なのだが、色も形も可愛い感じなので、除草されることもなく放置されているようだ。
実のところ、かなり前から咲いているのだが、今は花の少ない時期だけによく目立つ。
本日の掲句は、そんな草花が蕎麦屋さんの入り口付近に繁茂しているのを見て詠んだ句である。
「そば」をならべた駄洒落句だが、これが想像して詠んだものであれば、多分「あ、そう」で終わると思う。
しかし、現実にそんな場面があったことを知っていただけらば、「へぇ、そう~」と思って貰えるのではないか。そんなことも考えながら写真とともに掲載した。
尚、「姫蔓蕎麦」は季語ではないので、上五には「短日」をおいた。これは、日暮れが早く、昼が随分と短く感じられる冬の日の感覚を表した冬の季語。
因みに、「姫蔓蕎麦」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 秋の野に姫蔓蕎麦の褥かな
② 踏み石に毛布の如く姫蔓蕎麦
③ 姫蔓蕎麦冬の疏水を彩りぬ
①は、秋の野の一画に繁茂した姫蔓蕎麦を詠んだもの。沢山の花が一斉に咲くとピンク色のカーペットを敷いたようになる。*褥(しとね):座るときや寝るときに下に敷く物。
②は、あるお宅の玄関前に置いてある踏み石を、温かい毛布でくるむように咲いている様子を見て詠んだもの。
③は、近くの疏水岸の石積を被うように、繁茂しているのを見て詠んだ句。ピンク色の花と紅葉した葉が、荒涼とした雰囲気を幾分か和らげていた。
姫蔓蕎麦は、タデ科イヌタデ属の蔓性常緑多年草。ヒマラヤ地方原産で、日本にはロックガーデン用として明治中頃に渡来した。赤まんま=犬蓼(いぬたで)の仲間で、ピンク色(淡紅色)の小さい花が毬のように集まって咲く。
花期は5月頃~12月頃と非常に長いが、真夏には花がいったん途絶える。また、葉にはV字形の斑紋があり、秋には紅葉する。名前は、蔓蕎麦(つるそば)の花に似ていて、小さいことからついた。別名はポリゴナム。
「姫蔓蕎麦」を詠んだ句がほとんどないので、参考句として「短日」を詠んだものをいくつか掲載した。
【短日の参考句】
短日をほどよく動き日記書く (阿部みどり女)
短日の何せむとして道に出し (長谷川双魚)
短日や五時と約して電話切る (星野立子)
短日の貨車押しあひつつ停る (木下夕爾)
短日の沼の反射の一走者 (藤田湘子)