■ サフランの嫋々として明けの道
( さふらんの じょうじょうとして あけのみち )
「サフラン」という名前をどこかで聞いたという人は多いと思うが、実際に花を見たという人は少ないのではないだろうか。
かくいう自分も、その花を見たのは数年前。たまたま通った道端の花壇に植えてあった。
この花、淡い紫色の非常に可憐な花なのだが、見た印象は非常に弱々しく、雨などに当たると直ぐに萎れてしまう。
本日の掲句は、そんなサフランの花を見て詠んだ句である。
中七で使った「嫋々(じょうじょう」とは、「なよなよとして風情のあるさま。柔らかくしなやかなさま。」をいうが、漢字の印象からも、この花を形容するのにぴったりだと思い使ってみた。
「サフラン」は秋の季語。「花サフラン」とすると「クロッカス」を指し、春の季語となるので要注意。
余談だが、「嫋々」には、他に「音や声が細く長く続くさま」の意があり、「余韻嫋々」という熟語がある。また、「風がそよそよ吹くさま」の意もあり、「薫風嫋々」という熟語がある。更に、「嫋やか」と書いて「たおやか」と読む。
話は戻って、「サフラン」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① ひ弱なるサフラン咲けり道の端
② サフランの咲けば摘まるる雌蕊かな
①は、サフランを見た第一印象を詠んだ句。着眼点は本日の掲句と同じ。
②は、サフランの花の長く伸びた赤い雌蕊が、漢方の生薬、香辛料などに使われるため、直ぐに摘み取られてしまうことを知り詠んだ。
サフランは、アヤメ科サフラン属の多年草。原産地はペルシャで江戸時代末期に日本に渡来した。春に咲くクロッカスの仲間で、秋に花を咲かせることから、「秋咲きクロッカス」とも呼ばれている。花期は10月~11月。
既述の通り、サフランの雌蕊は生薬、香辛料に使われるが、他にも化粧品、食品の着色料などにも使われる。生薬、香辛料など1g作るのにサフランの雌蕊は300~500本必要であり、市販される物は非常に高価だとのこと。
サフランの名がついた植物にイヌサフラン、サフランモドキがある。これらは、花がサフランに似ているということで命名されたのだが、全く別の科の植物である。
「サフラン」を詠んだ句はままあり、以下にネットで見つけた句をいくつか掲載した。
【サフランの参考句】
心眼にサフランの蕊あざやかに (阿部みどり女)
サフランの花を心にとどむる黄 (後藤比奈夫)
サフランを摘みたる母も叔母もなし (青柳志解樹)
サフランの花をぐるりと雨しぶき (鷹羽狩行)
サフランの花や岬の療養所 (松原文子)