■ 冬天に鴉が騒ぐ何やらん
( とうてんに からすがさわぐ なにやらん )
昨日は、アメリカの大統領選挙があり、トランプ氏が勝利して第45代大統領になることになった。
当初から暴言が多くて問題視され、事前の世論調査ではクリントン氏が優勢とされていたが、その予想を大きく翻しての当選。さてこれからどうなるか。
本日の掲句は、何やら胸騒ぎする感じを、植物園の森で大きな声を発して騒いでいた鴉たちに重ねて詠んでみた。「鴉」は季語でないので、本句では冬の季語「冬天(とうてん)」を上五においた。
*何やらん:何事なのだろう。
尚、「鴉(からす)」は単独では季語にならないが、「寒鴉(かんがらす、かんあ)」「冬鴉」とすると冬の季語になる。また、春は「鴉の巣」、夏は「鴉の子」、新年は「初鴉」が各季の季語となる。
ところで、鴉と言えば非常に賢い鳥と言われている。クルミを車に轢かせて割る、木の枝などを道具にして虫を取る、6まで数を数えることができる、人の顔を記憶しているなどなど、そのことを示す様々な事例がネットなどで紹介されている。
また、コミュニケーション能力も優れていて、写真のハシブトガラスなどは30種類以上の鳴き声を組み合わせてコミュニケーションと取っていると言われている。
そんなこともあり、鴉には神聖な鳥という良いイメージがあり、特に三本足の鴉=八咫烏(やたがらす)は、神の使いとも言われ、日本サッカー協会のシンボルマークにもなっている。
ただ、人の住居に近い所に住み、時々ゴミ袋を破り餌を漁ったりするので、厄介者にもなっている。また、「鴉が夜鳴くのは不吉な前兆」ということで、毛嫌いされる向きもあるが、なかなか憎みきれない存在ではある。
尚、カラスを漢字で、「烏」とも書くが、これは、カラスが黒く、目がどこにあるのかかわらないので、一画ないというのが由来となっているそうだ。また、「鴉」は「あ」と読み、カラスの鳴き声に由来する表音文字だとのこと。
話は戻って、「鴉」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 神さぶる糺の森や寒鴉
② 天辺で独り実を食む寒鴉
③ 熊野路や寒鴉飛び交う大古杉 *寒鴉(かんあ)
①の句にある「糺の森(ただすのもり)」については、本ブログでも以前紹介したことがあるが、世界文化遺産にも登録されている下鴨神社の森のことである。
②は、葉を落とした南京櫨(なんきんはぜ)の大木の天辺で、独り黙々と実を食べている鴉を見て詠んだ句。
③は、昨年の12月、熊野古道に行った時に詠んだ句。樹齢数百年という巨大な杉が林立する森の中を歩いていると、鴉の甲高い声が木の天辺の方から聞こえてきた。
鴉を詠んだ句は非常に多いが、記事が長くなったので参考句の掲載は割愛する。