■ 木漏れ日に光るものあり冬蕨
( こもれびに ひかるものあり ふゆわらび )
花としては、菊花展の菊の他、薔薇や秋桜、アメジストセージなどが目についたが、これらは、既に本ブログでも紹介している。
その他にも、いくつか咲いている花はあったが、あまり知られていない洋名の花がほとんど。
そんな中、植物の森で出会ったのが、冬蕨(ふゆわらび)。初めて目にした訳ではないが、思いがけないことだったので少々驚いた。
本日の掲句は、その時の様子を詠んだものである。「冬蕨」は「花蕨」「寒蕨」とも言い、冬の季語になっている。
因みに、「冬蕨」に関しては過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 暗がりに金の炎か冬蕨
② 冬蕨どこにおわすや不動尊
①は、花の形を「金の炎」に喩えて詠んだもの。本日の掲句と趣向は似ている。
②は、金の炎にも見える花を不動尊(不動明王)の背にある火炎のイメージを重ねて詠んだもの。
冬蕨と言われるものには、いくつか種類があるが、写真のものは正式には「大花蕨(おおはなわらび)」という。これは、ハナヤスリ科ハナワラビ属の冬緑性シダ植物。日当たりの良い土手、畦、草地などに生育する。夏は枯れ、秋から冬にかけて草丈が30~50cmになる。
葉は二種類あり、一つは普通の栄養葉、他は先に黄色い粟粒状の胞子をつける胞子葉となる。胞子葉の上部につく胞子嚢穂は2回~3回羽状に分岐し、円錐状に丸い胞子嚢をつけ、それが花のように見える。
他の近隣種には「冬の花蕨」と「赤花蕨(あかはなわらび)」がある。花だけでは見分けがつかないが、葉っぱの形に特徴があるので区別できるとのこと。
「冬蕨」「花蕨」「寒蕨」で詠まれたものはあまりないが、以下にはネットで見つけた句をいくつか掲載した。
【冬蕨等の参考句】
寒蕨他もうす味の誕生日 (能村登四郎)
冬蕨「樹下の石仏」我と逢ふ (森澄雄)
夢見るか夢見しあとか冬蕨 (青柳志解樹)
山城に鏃びらきの寒蕨 (木内彰志)
風韻の人おもふべし冬蕨 (飴山實)