■ 釣船草数多集結何やらむ
( つりふねそう あまたしゅうけつ なにやらん )
今日取り上げた「釣船草(つりふねそう)は、昔であれば野の小川や田畑の用水路の暗がりでよく見かけたが、今は小川や用水路そのものが近辺になく、ほとんど見かけなくなった。
写真の釣船草は、植物園で見たものだが、かつて見たものも、このように沢山群れなして咲いていた。名前は、花の形が帆掛船を釣り下げたように見えることから付けられたとのこと。
本日の掲句は、その釣船草の群生を見て詠んだものだが、昨今ニュースにもなった隣国からの漁船団に重なり、賑やかではあるが、何か異様にも感じた。「釣船草」は、秋の季語。
*何やらむ:何事なのだろう。
*何やらむ:何事なのだろう。
因みに、「釣船草」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① さわ風にゆらりゆらりと釣船草
② 船底に甘い蜜あり釣船草
③ 暗がりに出航待つや釣船草
①は、咲いている場所を爽やかな風が吹いている沢と想定して詠んだもの。「さわ風」は、爽やかの「さわ」と「沢」をかけた造語。
②は、この花の後方の渦巻状になっているところに、甘い蜜がいっぱい入っていることを知り詠んだ句。
③は、釣船草を出航を待つ釣船に見立てて詠んだ句。
釣船草(釣舟草、吊舟草)は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草で、原産地は東アジア。花期は8月~10月。花色は紫色が主だが、白、黄などもある。それらを区別するために、紫釣船、白釣船、黄釣船ということもある。
果実はさく果で、熟すとホウセンカなどと同様に種子が弾けて飛び散るように拡がる。そのことから、野鳳仙花(のほうせんか)とも呼ばれる。他に法螺貝草(ほらがいそう)という別名もある。
釣船草(釣舟草、吊舟草)に関しては本ブログでも何句か紹介したことがあるが、以下にはそれ以外のものを選んで掲載した。
【釣船草(釣舟草、吊舟草)の参考句】
滴りのあつまるひびき釣船草 (滝春一)
揺れてをる釣舟草の花藪へ (森田峠)
釣舟草水は百代の過客にて (高澤良一)
猪垣へ消えゆく径や釣舟草 (八木林之介)
釣舟草揺れて木洩れ日漕ぐごとし (有賀芳江)