■ 七草の殿として萩盛る
( ななくさの しんがりとして はぎさかる )
本日に掲句は、そんな萩の花を見て詠んだ句だが、七草の最後を締めくくるように咲いているというのが句意。「萩」は、言うまでもなく秋の季語。
*殿(しんがり):退却する軍隊の最後尾にあって、追撃する敵を防ぐ役。「後駆(しりがり)」から変化。後に一番後ろ、最後の意に使われる。
ところで、秋の七草は、山上憶良(やまのうえのおくら)が万葉集で詠んだ、以下の歌が元となったと言われている。
秋の野に 咲きたる花を 指折り
かき数ふれば 七種の花
萩の花 尾花 葛花 撫子の花
女郎花 また 藤袴 朝貌の花
*指折り(およびをり) *七種(ななくさ) *尾花(おばな)=芒(すすき)
*女郎花(おみなえし) *朝貌(あさがお):現在の桔梗
*女郎花(おみなえし) *朝貌(あさがお):現在の桔梗
萩は、この中でも特別な花で、万葉集で詠まれた花では最も多い。それ故か、上記歌でも七草の最初に挙げられている。
また、「萩」という文字は、草冠+秋で表されているが、これは日本で作られた漢字=国字。秋を最も代表する花として扱われていたことが窺える。
話は戻って、「萩」の花に関しては過去に何句も詠んでいるが、以下には比較的気に入っている句をいくつか再掲した。
【関連句】
① 朝露に濡れてしだるる萩の花
② 七重八重咲きて零るる萩の花
③ 毀れたる築地はなやぐ萩の寺 *毀れたる(こぼれたる) *築地(ついじ)
①は、朝露に濡れている萩の花を見て詠んだ句。
②は、幾重にも重なりながら咲き乱れ、花が零(こぼ)れている様子を詠んだ句。狂言「萩大名」の歌からの引用。
③は、あるお寺の崩れかけた築地塀に沿って咲き零れている萩を見て詠んだ。
萩は、マメ科ハギ属の落葉低木。花期は7月から10月。花は豆のような蝶形花。「はぎ」という名前の由来は、毎年古い株から、新しい芽を出すということで「はえき(生え芽)となり次第に「はぎ」に変化したという説が有力である。
萩を詠んだ句は非常に多く、本ブログでも何句か紹介したことがあるが、今回はそれ以外のものを選定して掲載した。
【萩の参考句】
しら露もこぼさぬ萩のうねりかな (松尾芭蕉)
白萩のしきりに露をこぼしけり (正岡子規)
萩の風ほつほつと花咲きそめし (高浜虚子)
萩咲けり浅間をのぼる雲みだれ (水原秋櫻子)
萩散つて地は暮れ急ぐものばかり (岡本眸)