■ 山牛蒡おのが重さに倒れけり
( やまごぼう おのがおもさに たおれけり )
あまりにも大きくなったので、やむをえず伐ってしまったが、根は残っていたせいか、今年も7月初め頃からみるみる伸び出し、屋根に届くぐらいまで成長した。しかしながら、つい先頃、雨に打たれ、自らの重みで倒れてしまった。
本日の掲句は、その時のことを詠んだ句だが、植物名が非常に長いので「山牛蒡」とした。尚、「山牛蒡の花」は夏の季語になっているが、実は季語になっていない。いささか強引だが、本句では、「山牛蒡」を秋の季語に準じて使用した。
写真の方は、自宅のものがすっかり枯れてしまったので、別の場所で撮ったものを掲載した。
因みに、昨年は既述の通り、大きくなった段階で伐ってしまったが、そのことを以下のように詠んだ。
山牛蒡大きく伸びて伐られけり
これは、「出る杭は打たれる」「過ぎたるは猶及ばざるが如し」をイメージして詠んだもの。
その他に、過去には以下の句も詠んでいる。
【関連句】
① 奇っ怪な実は太古より山牛蒡
② 図太きは我が取柄なり山牛蒡
③ 高塀を越えて房垂る山牛蒡
①は、山牛蒡の実の奇怪さを詠んだもの。多分、太古の昔の姿そのままに、今日までしぶとく、ふてぶてしく生き残ってきたのだろう。②は、この山牛蒡にあやかって、自分も図太く生きたいものだという願いをこめて詠んだもの。③は、ある家の高塀から、赤紫色の実を葡萄の房のように垂らしているのを見て詠んだ。
洋種山牛蒡は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草。原産地は北アメリカで明治初期に渡来。繁殖力、成長力が強い植物で、一度根付くと葉を一杯に広げながら、高さ約2メートルぐらいまで成長する。
6月~7月頃に淡紅色の花をつけ、8月~10月頃に濃紫色のブドウを小さくしたような実をつける。この実を潰すと真赤な汁が出ることからインクベリーとも呼ばれている。
名前に「山牛蒡」がついているのは、根がキク科の「牛蒡」に似ていることによるが、全体が有毒で食べると嘔吐や下痢を起こす。「洋種」は在来種と区別するためにつけられた。
「山牛蒡」に関しては、実を詠んだ句はほとんどないが、花を詠んだ句はいくらかはある。以下には、ネットで見つけたものを参考まで掲載した。
【山牛蒡の参考句】
山牛蒡に石ころ寄せぬあらきはり (高田蝶衣)
山牛蒡の花の強さの津軽漁婦 (名取思郷)
今日もまた暑し洋種山牛蒡 (小島健)
ひややかな風生む花の山牛蒡 (大原政喜)
人が触れゆき花前の山牛蒡 (手塚美佐)