■ 爽やかな風の小路や瑠璃茉莉
( さわやかな かぜのこうじや るりまつり )
カタカナで書くと、何かのお祭りと関係があるのかと思ったりもするが、全く関係がない。漢字では、「瑠璃茉莉」と書く。日ごろ使わない漢字ばかりで、初めて見た人はなかなか読めないかも知れない。
先ず「瑠璃」だが、これは「るり」と読み、「七宝(しっぽう)の一つで、つやのある美しい青い宝石。」のこと。英名ではラピスラズリ(lapis lazuli)という。よく耳にする瑠璃色は、この宝石の色に由来する。
次に、「茉莉」だが、これは「まつり」と読む。草冠の下の方を音読みすれば、そう読める。
これは、ジャスミンと呼ばれる植物のことで、サンスクリット語では「mallikā(マリカー)」と言われていたものが、中国で「「末利」と表記され、後に草冠がついて「茉莉」となった。
そして、それが、日本に流入した時に、「まつり」と読まれるようなり、和名で「茉莉花(まつりか)」と呼ばれるようになった。
これで、漸く「瑠璃茉莉」の意味が、「瑠璃色のジャスミン」のことだと分かるのだが、話はこれで終わりにはならない。実はこの植物は、ジャスミンとは科が全く違う植物だったのである。
だから、正確には「瑠璃色のジャスミンに似た花をつける植物」ということになる。
前書きが非常に長くなったが、本日の掲句は、その瑠璃茉莉が街中の小路(こうじ)=狭い道に植えてあるのを見て詠んだ句である。「瑠璃茉莉」は季語になっていないので、本句では「爽やか」が秋の季語。
因みに、「瑠璃茉莉」に関して、過去に以下の句を詠んでいる。
番まつり瑠璃まつりとは賑々し
茉莉(まつり)が名前についた植物に「番茉莉(ばんまつり)」があるが、たまたま、瑠璃茉莉と並んで咲いていたので、「祭り」にかけて「賑々し(にぎにぎし)」と詠んだ。
尚、番茉莉もジャスミン(茉莉花)の仲間でなく、瑠璃茉莉の仲間でもない。
瑠璃茉莉は、イソマツ科ルリマツリ(プルンバゴ)属の半蔓性常緑小低木。南アフリカ原産。花期は5月~10月と長い。花は、青、水色のくっきりした高坏型の五弁花。白花もある。別名はプルンバゴ。
季語になっていないせいもあり、「瑠璃茉莉」を詠んだ句はほとんどないので、参考句は割愛する。