■ 葉鶏頭 二句
○ ロックだぜビジュアル系の葉鶏頭
( ろっくだぜ びじゅあるけいの はけいとう )
○ 歌舞伎者ど派手に決めて葉鶏頭
○ 歌舞伎者ど派手に決めて葉鶏頭
( かぶきもの どはでにきめて はげいとう )
先週の土曜日、例により2週間ぶりに植物園に行っていきた。蓮の花はすっかり終わり、潜望鏡のような花托が立ち並んでいた。そんな中、今回特に目立ったのが葉鶏頭(はげいとう)である。
この植物の花は全く目立たないが、その葉は赤、黄、緑、白など色鮮やかであり、ふさふさとした感じが何とも華やかな雰囲気を醸し出している。
本日の掲句は、そんな植物を見て連想したことを詠んだもの。
第一句では、この植物の姿をビジュアル系のロックバンドに喩えた。初期のXJAPANなどがそれに当たるが、その奇抜な格好が何となく似ている。
実は、過去にも、こうしたビジュアル系のファッションをイメージして以下の句を詠んでいる。
ビジュアルにきめてふさふさハゲイトウ
この句では、「ふさふさ」と「ハゲ」の対比が隠し味。葉鶏頭は秋の季語。
第二句は、ぐっと和風に、歌舞伎者のど派手な出で立ちを想起して詠んだもの。歌舞伎者とは、戦国時代末期から江戸時代初期にかけて流行した、異風を好み、派手な身なりをして、常識を逸脱した行動に走る者たちのこと。
この美意識が歌舞伎という芸能の原型となり、今日の豪華絢爛たる舞台衣装に引き継がれている。その歌舞伎との関連では、過去に以下の句を詠んでいる。
葉鶏頭連獅子舞の髪のごと
この句は、今は亡き中村勘三郎さんと子との親子三人による連獅子の舞いを思いだして詠んだ句である。紅白の髪を振り回す姿が印象的だった。
葉鶏頭は、ヒユ科ヒユ属の一年草。インド、熱帯アジア原産。日本には江戸時代後期に渡来した。花は全く目立たないが、頂上部の葉は秋の低温で色を増し、赤、黄、緑、白など色鮮やかになる。
特に赤い葉が「鶏頭」に似ているところから、この名になった言われるが、鶏頭とは科は同じだが別種の植物である。別名には「雁来紅(がんらいこう)」「かまつか」がある。
葉鶏頭を詠んだ句は結構あり、これまで何句か紹介したことがあるが、以下にはそれ以外のものを掲載した。
【葉鶏頭の参考句】
かくれ住む門に目立つや葉鶏頭 (永井荷風)
秋深しピアノに映る葉鶏頭 (松本たかし)
葉鶏頭出窓一杯燃えてをり (草間時彦)
根元まで赤き夕日の葉鶏頭 (三橋敏雄)
とつぷりと暮れてあまたの葉鶏頭 (岸本尚毅)