■ 子宝を抱くがごとく蘇鉄咲く
( こだからを いだくがごとく そてつさく )
この植物は、入口から入って直ぐのところに植えてあり、いつも見ていたはずだが、その見事な花姿を見たのは今回が初めてだった。
それは、黄金色でラグビーボールを長くしたような花で、緑の葉に抱かれるように立っていた。写真は7月半ばに撮ったものだが、先週の土曜には茶色にくすんでいた。
本日の掲句は、遅ればせながら、その見事な花姿を「子宝」に喩えて詠んだ。尚、「蘇鉄咲く」は、「蘇鉄の花」「花蘇鉄」とともに夏の季語になっている。
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▽▽ *12月中旬撮影
辛抱の菰に巻かれし蘇鉄かな
この句は、写真がないとイメージできないかも知れないので、右にその写真を掲載した。雪や霜のため葉が傷まないよう、防寒対策で実施されているとのこと。
蘇鉄は、裸子植物ソテツ科ソテツ属の常緑低木。原産地は日本及び中国南部など。ソテツ類の中で日本に自生する唯一の種で、九州南部~沖縄など温暖な地方に分布する。
生育は遅いが成長すれば樹高は8m以上にもなる。非常に長寿で樹齢が1000年を超すものもあるそうだ。
花期は6月~7月。雌雄異株で写真に掲載したものは雄花。雌花は茎の先端に丸くドーム状に膨らむように咲く。種子は成熟すると朱色に色づく。有毒だが、澱粉分も多いので、皮を剥ぎ、時間をかけて充分に水に晒し、発酵させ、乾燥するなどの処理をすれば食用になるとのこと。
蘇鉄の名前の由来は、この木が衰えたときに幹に鉄くぎを打ち込むとよみがえって元気になる、すなわち「鉄で蘇生する」という謂れに因む。
「蘇鉄咲く」「蘇鉄の花」「花蘇鉄」で詠んだ句はままある。以下には、ネットて見つけたものをいくつか掲載した。
【蘇鉄咲く等の参考句】
白鳥は芝生に眠り蘇鉄咲く (佐藤念腹)
蘇鉄咲き黒潮荒き雨降らす (神尾季羊)
蘇鉄咲く開国の海見はるかし (川崎展宏)
親子馬走る岬の蘇鉄咲く (野田武)
赤壁の寺の玄関花蘇鉄 (井上たか女)