■ 颯爽と大輪開く紅蜀葵
( さっそうと たいりんひらく こうしょくき )
7月始めごろから、近辺でも、鮮紅色の大輪の花、「紅葉葵(もみじあおい)」が見られるようになった。
この花を最初に見た時は、その色合いがハイビスカスに似ていて実に夏っぽく華やかな花だと思った。
本日の掲句は、ある家の玄関先で、その紅葉葵を見て詠んだ句だが、下五では漢名の「紅蜀葵」を使った。
俳句では、何故かこの名で詠まれるものが多く、「こうしょくき」または「もみじあおい」と読む。
「紅葉葵」「紅蜀葵」は夏の季語。
因みに、過去には「紅蜀葵」でなく「紅葉葵」「紅葉あおい」を使って以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 夏秋のハーフなりしか紅葉葵
② 葉も花もキレキレ紅葉あおいかな
①は、名前の「紅葉葵」が、秋の季語の「紅葉」と夏の季語の「葵」を合わせた名前であることに着目して詠んだ句。名前そのものが季重なりであり、俳句ではかえって敬遠されたとも考えられる。
②は、葉も花もシャープに裂れていることを「キレキレ」と表現して詠んだもの。
紅葉葵(紅蜀葵)はアオイ科フヨウ(ハイビスカス)属の多年草で北アメリカ原産。花は一日花だが、一つの花が咲き終わるのを待って次の花がそっと咲く。花期は7月から9月。夏の終わりから秋の初めにかけて咲く端境期の花であるともいえる。
紅葉葵という名前は、葵の仲間で、葉っぱが紅葉(かえで)に似ていることからつけられたそうだ。確かに、葉の基部がくっついていて、掌状に3裂または5裂している。
また、漢名の紅蜀葵は、紅色の花が咲く蜀葵という意。蜀葵は蜀の国から伝来した立葵(たちあおい)のこと。花が黄色い「とろろ葵」の別名を「黄蜀葵(おうしょっき)」というが、それと対の名前になっている。
既述の通り、「紅葉葵」で詠んだ句がほとんどないので、参考句は「紅蜀葵」で詠まれたものを掲載した。但し、「こうしょくき」と読むか、「もみじあおい」と読むかは不明。
【紅蜀葵(紅葉葵)の参考句】
引き寄せてはじき返しぬ紅蜀葵 (高浜虚子)
紅蜀葵真向き横向ききはやかに (鈴木花蓑)
紅蜀葵上目づかひに峡童女 (岸田稚魚)
佗び住みてをり一本の紅蜀葵 (深見けん二)
海とほく流寓暗し紅蜀葵 (鍵和田秞子)
*流寓(りゅうぐう):放浪して異郷に住むこと。