■ 祇園祭より 二句
○ 宵山や溺るるほどに人の波
( よいやまや おぼるるほどに ひとのなみ )
○ 人波を見下ろす山鉾軋みけり
○ 人波を見下ろす山鉾軋みけり
( ひとなみを みおろすやまぼこ きしみけり )
*16日宵山
本日の掲句は、その祇園祭の様子を詠んだものである。
まず第一句は、宵山の様子を詠んだもの。夕方6時過ぎに行った時は、予想以上の人波で一度その人波に入ると引き返せない。まさに溺れるほどの人出だった。
こういう人波が好きでない人は、絶対に行かない方が良い。「宵山」は夏の季語。
第二句は、山鉾巡行を見て詠んだ句だが、今回は、第一句との関連で「人波」を使って詠んでみた。
鉾は高さ25mあり、屋根は地上8mぐらいのところにある。その鉾が、大勢の人によって曳かれて動くのだが、時々ぎしぎしと軋む音がする。本句では「山鉾」が夏の季語。
*16日宵山
因みに、祇園祭に関しては、過去に10数句詠んでいるが、比較的ましなものを以下に再掲する。
【関連句】
① 山鉾やきしむ車輪に重みあり
② 力こむ扇の先や辻回し
③ 雨音に祇園囃子の沁みて落つ
*16日宵山
①は、山鉾の車輪の軋みに重みを感じて詠んだもの。山鉾の重さは10トン超になるとのことだが、その重みと歴史の重みを重ねて詠んでみた。
②は、辻回しの時の音頭取りの所作に注目して詠んだ句。扇子の動きが面白い。*辻まわし:交差点での山鉾の方向転換。
③は、昨年詠んだ句。山鉾巡行は原則とし「小雨決行、大雨強行」だが、昨年は台風で大型の鉾が倒される危険性があり開催が危ぶまれた。しかし、風が強くならず最終的には雨の中で実施された。
*17日山鉾巡行
祇園祭は、京都の東に位置する八坂(やさか)神社の祭礼で、貞観11年(869年)に京の都や全国各地で疫病が流行し、その疫病退散を祈願して始められた「祇園御霊会」が起源とされている。
祭は、この後7月31日まで続くが、一昨年より49年ぶりに、山鉾巡行は、前祭(さきまつり)と後祭(あとまつり)に別れて実施されるようになった。後祭の巡行は24日に予定されている。
*17日山鉾巡行
参考句は、「宵山」「山鉾巡行」の景を詠んだ句をいくつか掲載した。
【宵山】
宵山の灯の入りはなの灯が迎ふ (宮津昭彦)
宵山ややうやく暮るる路地の空 (浅沼 艸月)
いさぎよく宵山の雨あがりけり (成瀬櫻桃子)
【山鉾】
山鉾のもう見ゆる頃格子開け (西村和子)
山鉾やじわじわと暑の押し寄する (鍵和田柚子)
ビル谷間山鉾ずんと空晴るる (坂井信彦)
*17日山鉾巡行