■ 炎天にヒマラヤ杉の球果立つ
( えんてんに ひまらやすぎの きゅうかたつ )
京都の植物園の入口から少し歩くと洋風庭園があり、そこに高さ数十メートルもあるヒマラヤ杉が数本植えてある。
先日訪れた時は、その各枝に卵を一回り大きくしたような若い球果が、いくつも立ち並んでいた。
この球果は、昨年の11月頃に受粉し大きくなったもので、深緑の葉をバックに緑白色が映えて美しい。これらは秋に成熟し暗褐色に変色する。
本日の掲句は、そんな景を見て詠んだ句。炎天に聳え立つヒマラヤ杉の大樹は、その名のにあるヒマラヤを偲ばせ、まさに壮観だった。
尚、ヒマラヤ杉は季語でないので、本句では、炎天が夏の季語となる。
ヒマラヤ杉は、マツ科ヒマラヤスギ属の常緑針葉樹。原産地はインド北部(ヒマラヤ、カシミール)、パキスタン、アフガニスタンなど。明治時代初期に日本に導入され、庭園樹、公園樹として植えられた。
樹高は40m~50mにもなり、幹の直径が3mに達するものもある。雌雄同株、雌雄異花で、花期は10月~11月。雄花は円錐形で長さは3cm程度、雌花は5mm程度で目立たない。
球果は7cm~13cmの長さで、幅は5cm~9cm。1年間かけて成熟し、秋から冬にかけて翼状の種子を剥がすように落とす。通常の松ぼっくりの形で落ちることはない。
名前に「スギ」がついているが、葉を見ればわかるように歴としたマツの仲間(マツ科)。樹高が高く樹形が円錐形であることから、スギ(ヒノキ科)という名前が付いたのではないかと言われている。(誤訳とも)別名はヒマラヤシーダ。
季語でもないので「ヒマラヤ杉」を詠んだ句はさすがにないだろうと思っていたが、ネットでいくつか見つけたので、参考まで以下に掲載する。
【ヒマラヤ杉の参考句】
守宮啼くやヒマラヤ杉の深き燈に (渡辺水巴)
法師蝉ヒマラヤ杉の暗さより (阿部みどり女)
ヒマラヤ杉に冬棲みならぶ個室錠 (松村蒼石)
新社員ヒマラヤ杉のみどりの夜 (角川源義)
鶴の本読むヒマラヤ杉にシャツを干し (金子兜太)