■ 錨草 二句
○ それはそれぐっとこらえていかり草
( それはそれ ぐっとこらえて いかりそう )
○ 蜘蛛の子を散らすがごとく錨草
○ 蜘蛛の子を散らすがごとく錨草
( くものこを ちらすがごとく いかりそう )
それは、名前が長すぎるなどといった卑近な理由もあるが、主要な原因は、その植物に馴染まないことにある。しかし、何年も見ていると次第に愛着が湧いてきて一句でも詠もうかという気になってくる。
今回取り上げた「錨草(いかりそう)」もその一つで、初めて見たのは数年前、場所は植物園。実に奇妙な花だというのが第一印象だった。
本日の掲句は、そんな「錨草」を初めて詠んだもので、第一句は、もっぱら名前の面白さに着目して詠んだ。
すなわち、「錨草にあやかって、錨のようにぐっと怒りをこらえよ」というの句意の戯れ句である。「錨草」は「碇草」とも書き、春の季語。
第二句は、花の形に着目して詠んだもの。よく見れば蜘蛛が沢山集まっているようにも見え、ふと「蜘蛛の子を散らす」という成句を思い出し掲句ができた。
ちょっとグロテスクな動画だったので、リンクは貼らなかったが、興味のある方は自分で検索して見て欲しい。但し、虫が嫌いな方は見ない方が良いだろう。
尚、今回は、二句ともあまり綺麗な句ではないが、花そのものは綺麗なので、次回はもっと美しい句を詠みたいと思う。
花期は4月~5月。花は、4枚の花弁が距(きょ)を突出し錨のような特異な形をしている。名前はこれに由来する。花色には紅紫、白、黄などがある。
*距:花の萼や花冠の基部近くから突出した部分。通常その内部に蜜腺がある。
【錨(碇)草の参考句】
碇草生れかはりて星になれ (鷹羽狩行)
錨草山に咲き出て海の色 (高橋悦男)
うつむくは負けの姿よ錨草 (檜紀代)
みづいろの刻の流るる碇草 (行方克己)
錨草山峡に咲き船知らず (猪瀬幸)