■ 簪にはちょっと地味かも花木五倍子
( かんざしには ちょっとじみかも はなきぶし )
本日の掲句は、その花を見て詠んだ句である。同じ房状の花でも藤の花のように明るい紫色であれば良かったのだが、ちょっとくすんだ黄緑色で、簪にするにはちょっと地味かも知れないというのが句意。「木五倍子の花」「花木五倍子」は春の季語。
ところで、「木五倍子」という漢字、「きぶし」と読める人は少ないのではないだろうか。かくいう自分もなかなか読めず、今もってなじまない。そこで、そんな当て字がなぜ使われているのか調べてみた。以下その要点を参考まで記載する。
○「五倍子」とは、ヌルデという植物の若芽や若葉などにできる虫こぶのことを言う。これを加熱乾燥させるたものが黒色染料(お歯黒など)の材料になる。
○「五倍子」という名前は中国語由来で、そのまま「ごばいし」と読んでいたが、五倍子を付子(ふし)とも言うことから、五倍子も「ふし」と読むようになった。
○「木五倍子」は、実が黒色染料の五倍子の代用になるということで命名され、読み方も「きぶし」となった。
花の姿が藤に似ているというので、「木藤(きふじ)」という別名もある。
【木五倍子の参考句】
山淋し木五倍子がいくら咲いたとて (後藤比奈夫)
白糸の滝の坂道きぶし咲く (阿部ひろし)
谷かけて木五倍子の花の擦れ咲 (飯島晴子)
木五倍子咲く地図には載らぬ道祖神 (北澤瑞史)
せせらぎに木五倍子そろそろ花を垂れ (高澤良一)