■ 三椏やどの枝先も花盛り
( みつまたや どのえださきも はなざかり )
三椏の蕾小雪の降る如く
その蕾が数週間前から綻んで、黄色い小花が塊となって咲いている。そして、数えきれないほどの、その塊が木全体をこんもりと覆っている。そこでまずは一句と思い、最初に浮かんだ句が以下の句である。
三椏や五股六股大流行り
( みつまたや ごまたろくまた おおはやり )
最近話題になった事柄にかけて詠んだ句で、それなりに面白いと思ったが、これを前面に出すと顰蹙を買いそう。そこで、新たに詠んだのが本日の掲句である。
ご承知とは思うが、三椏の枝は常に三つに分かれて伸びる。そして、そのことが名前の由来にもなった。掲句では、その枝のいずれの先も、花が満開になっていると詠んだ。三椏は、「三椏の花」として春の季語。
三椏の三枝三枝に花の燦 ( みつまたの さんしさんしに はなのさん )
これは、三椏の分かれた枝=三枝に花が燦然と咲いていることを詠んだもの。語呂合わせで調子を求めた。
名前は、 既述の通り、枝が常に三本ずつに分岐することからつけられた。漢字の「三椏」の「椏」は「あ」とも読み、木の股のことをいう。園芸種で赤花三椏(あかばなみつまた)という赤色の花を咲かすものもある。
樹皮には強い繊維があり、和紙の原料として用いられている。皺になりにくく、虫にも強いので1万円札などの紙幣や証紙など重要な書類に使われることが多いとのこと。
*赤花三椏「三椏の花」を詠んだ句は多く、これまで何句か紹介したことがあるが、今回はそれ以外のものを掲載した。
【三椏の花の参考句】
三椏の花雪片の飛べる中 ( 山口青邨)
三椏の花に光陰流れ出す (森澄雄)
三椏の花はじめから和紙の味 (瀧春一)
やすらぎや三椏は咲き垂るる花 (林翔)
三椏の花に瀬音の遠からず (行方克己)