■ 冬の東北の旅(2)
○ 船頭の唄に雪舞う最上川
( せんどうの うたにゆきまう もがみがわ )
旅行の初日は、「かみのやま温泉」にあるホテルで泊まったが、二日目は、そこから「最上川芭蕉ライン舟下り」にでかけた。出発点の古口港に着くと直ぐに案内されたのがツアー貸切の屋形船。
船に乗る前に見た最上川は満々と水を湛えており、ゆったりと流れていた。これが松尾芭蕉が句に詠んだ最上川かと暫し佇み、はるか川下に目をやった。
さみだれを集めて早し最上川
梅雨のころは、水嵩が更に増し、水の流れももっと早くなるのだろう。
船の中に入ると、炬燵が設置させていて結構暖かい。ここから約12kmを約1時間かけて下って行く。ベテランの船頭さんがガイドがてら地元の民謡なども披露してくれた。
本日の掲句は、その時の様子を詠んだ句である。その日は、大降りではなかったが粉雪がちらちらと舞っていた。唄われたのは「最上川舟唄」「真室川音頭」「花笠音頭」など。
因みに最上川が詠まれた句としては以下の句がある。
【最上川の参考句】
瀬の音や霧に明けゆく最上川 (正岡子規)
夏山の襟を正して最上川 (高浜虚子)
雪解や渦に渦鳴る最上川 (遠藤孝作)
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○ みちのくの雪の滴や露天風呂
( みちのくの ゆきのしずくや ろてんぶろ )
名前は、江戸時代初期に大銀山として栄えた「延沢銀山」に由来するとのこと。温泉街には、大正から昭和初期にかけての建築の旅館が立ち並び、大正ロマンの雰囲気を漂わせていた。
尚、当日泊まったのはここではなく宮城県の鳴子温泉のホテル。掲句は、そこの温泉の露店風呂に入って詠んだ句である。露天風呂の様子は撮影できないので、写真は銀山温泉街を写したものを使用した。
因みに、「みちのく」とは旧国名で「陸奥」と漢字表記する。「むつ」とも言い、現在の福島県、宮城県、岩手県、青森県、秋田県の一部を指す。一方、山形県と秋田県の一部は「出羽(でわ)」と言う。この点に関しては、今まで少し混乱して理解していたようだ。
【みちのくの参考句】
みちのくを出てにぎはしや江戸の秋 (正岡子規)
みちのくを来てわが傍に青林檎 (山口誓子)
螻蛄の鳴くみちのく夜の深さかな (高星吐)*螻蛄(けら)
みちのくを来てわが傍に青林檎 (山口誓子)
螻蛄の鳴くみちのく夜の深さかな (高星吐)*螻蛄(けら)
===おまけ===
東北の旅行で特に目についた物に、太くて長い氷柱(つらら)がある。京都では滅多に見られないだけに見るたびに驚嘆した。以下の句はその様子を詠んだもの。
○ つらつらと氷柱連なる軒の下
( つらつらと つららつらなる のきのした )