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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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人気なきベンチ温める冬日かな

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■ 人気なきベンチ温める冬日かな 
           ( ひとけなき べんちぬくめる ふゆびかな )

イメージ 1先の土曜日、今年初めて京都の植物園に行ってきた。昨年12月に行って以来3週間ぶりになる。この時期はあまり花が咲いていないので、これまでは敬遠してきたが、実際にどんな状況か確認のために行った。

開園時刻の9時を少し過ぎた頃に着き、いつもの通り正面入口から入ったが、予想通り閑散としていて裸木ばかりが目立った。そんな中、柔らかい日差しがベンチに当たり、明るく光っていたのが見えた。

本日の掲句は、そんな景を見て詠んだ句である。上五の「人気なき」は、「ひとけなき」と読み、「人のいそうな気配がないこと」をいう。「にんきなき」と読めば全く別の意味の句となる。

冬日は冬の季語。「冬の一日」あるいは「冬の太陽(日差し)」の両方の意味で使われるが、本句では後者の意味で使用した。余談だが、気象用語では「一日の最低気温がセ氏零度未満の日」のこと。

ところで、今回は「ベンチ」に注目して句を詠んだが、これまで人工物に関しては、あまり句に詠むことはなかった。植物などと違って季節性、生命感が感じられないからである。今回は、ベンチという人工物を詠むことで、ある状況において見た時に様々に語りかけてくることに気づいた。

イメージ 2そんなこともあり、以下では、ベンチに関して詠んだ句をいくつか取り上げてみた。

① 池広し月にベンチのあるほかは     (
永井龍男)
   広い池、月、ベンチのある風景。静寂感あり

② 秋風の人に掛けよとべンチあり   (湯浅桃邑)
   秋風が掛けよと語りかけてきたのは何故?

③ 冬麗の陽を載せ誰も居ぬベンチ  (楠本憲吉)
   本日の掲句と着想が似ている。さて良否は?

イメージ 3④ 母と子の夏帽重ねおくベンチ    (山田弘子)
   母子の語らいのベンチ。多分日陰で休憩しながら。

⑤ 緑蔭に舫ひし如く木のベンチ      (行方克己)*舫う(もやう):船を繋ぎとめる
   木のベンチを船に見立てたところが面白い。

⑥ ベンチみな老人が占め子供の日 (竹内柳影)
   多少とも皮肉を込めた、滑稽味のある川柳風の句。

こう見てみるとベンチも結構面白い素材であることが分かる。

イメージ 4因みに、ベンチに関しては過去に以下の一句だけ詠んでいる。

    春日和ベンチに寝ぬる人も見ゆ *寝ぬ(いぬ)

早春のある晴れた日、公園を散歩していた時に見た景を詠んだもの。

尚、「冬日」の参考句も掲載しようと思ったが、焦点がぼけるので今回は割愛した。

イメージ 5



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