■ 雪ん子のごとき顔して百合鴎
( ゆきんこの ごときかおして ゆりかもめ )
この百合鴎はユーラシア大陸北部で繁殖し、11月頃日本の各地に渡ってくるものの一群で、琵琶湖を塒(ねぐら)とし、餌場として鴨川にやってくる。
鴨川にその姿を見せるようになったのは、まだ新しく1974年以降だそうだが、今は、当地の冬の風物詩となっている。
百合鴎は鳩ぐらいの大きささで、全身が真っ白。いつも固まって行動するので、沢山集まった景は、雪が降り積もったようになる。また、個体の顔は、掲載の写真の通り実に愛らしい。
本日の掲句は、その百合鴎の顔を「雪ん子」に喩えて詠んだもの。「雪ん子」とは何となく思い浮かんだ言葉だが、あとで調べて見ると、「雪童子(ゆきわらし)「雪女の子供」「子供の姿をした雪の精」という説明があった。
想像上のもので、実際にその顔を見たわけではないが、当たらずといえども遠からずなのではないかと思う。尚、百合鴎は冬の季語。
【関連句】
① 北国はもっと寒いかゆりかもめ
② ゆりかもめ渡る世界も寒々し
この二つの句は対をなす句で、「北国はもっと寒いのだろうな、渡ってきた世界(京都)も北国と同様、非常に寒い」と詠んだものである。
百合鴎の語源については、①百合の花のように美しい、②「入江かもめ」が転じた、③奥地を意味する「ゆり」から派生したなど諸説あるが、いずれも定説になっていない。個人的には、百合の花のように清楚な感じがするので①説をとりたいと思う。
【百合鴎等の参考句】
めぐりては水にをさまる百合鴎 (石田郷子)
撒きし餌に白き狂乱百合鴎 (安達風越)
杭に立ち日に向き揃ふ百合鴎 (篠宮時江)
百合鴎波に浮沈をたのしめり (高橋良子)
着けばすぐ返す渡舟や百合鴎 (長谷川草洲)