■ 大いなる楓の落葉の色厚き
( おおいなる ふうのおちばの いろあつき )
この樹木は、植物園を開園する時に台湾から運んで植えられたもので、樹齢は約100年。樹高は25mほどで、木全体に葉を広げた姿は雄大であり、殊に紅葉の樹姿は壮観である。
植物園に行った時は、必ずその楓を仰ぎ見るのだが、先日は紅葉した葉を7~8割方落とし、樹下には落葉の厚い絨毯を形成していた。掲句は、その時の景を詠んだものである。季語は「落葉」(冬)。
ところで、「ふう」は「楓」と書くが、訓読みでは「かえで」と読む。だから、「ふう」は「かえで」と同じ仲間と思われがちだが、全く違う科の植物である。
恐らく日本に渡来した時に、掌状に分かれた葉が似ており、美しく紅葉することから、「かえで」の仲間と混同されたのだろう。ややこしい話だが、「楓」と書かれている場合は、どちらなのか確認する必要がある。
果実は、「かえで」のようなプロペラ型ではなく、栗のようなトゲに包まれた丸い集合果。秋にできる。別名には、三角葉楓(さんかくばふう)、台湾楓(たいわんふう)、伊賀楓(いがかえで)などがある。
【落葉の参考句】
吹きたまる落葉や町の行き止り (正岡子規)
団栗の己が落葉に埋れけり (渡辺水巴)
むさしのの空真青なる落葉かな (水原秋櫻子)
山々は落葉とねむる日をかさね (長谷川双魚)
高きよりひらひら月の落葉かな (日野草城)