■ 暖冬や黄葉残し咲く蝋梅
( だんとうや こうようのこし さくろうばい )
(写真①素心蝋梅)
ところで、右の写真はその時に撮ったものだが、さっとご覧になって何か違和感を感じないだろうか。毎年蝋梅をご覧になっておられる方は気づかれたと思うが、黄葉した葉を残したまま花を咲かせている。
場所によって多少異なるかも知れないが、蝋梅が満開になるのは通常1月中頃から2月にかけて。3枚目の写真は今年の1月末に撮ったものだが比較のため掲載した。花はまだ5分咲きで、葉の方はほとんどない。
本日の掲句は、上記のように暖冬で黄葉し散るのが遅れる一方、花が早々と満開となった蝋梅を見て、半ば「狼狽」して詠んだ句である。本句は、「暖冬」「蝋梅」が共に冬の季語で季重なりだが、句意からこのままとする。
:(写真②素心蝋梅)
:(写真③本年1月末に撮影した素心蝋梅)
因みに、「蝋梅」に関しては過去に以下の句を詠んでいる。いずれも詠んだのは1月中旬以降。
【関連句】
① 塀越しに薄黄の蝋梅融け始む
② 日当たりて香りとろける蝋梅の花
③ 蝋梅咲く紙石鹸の匂いして
①は、ある家の塀越しに咲き始めた蝋梅の花を見て詠んだ句。②は、蝋梅に日が当たって、香りとともに蕩(とろ)けだすような感じを詠んだもの。③は、蝋梅の花の甘い香りを昔使った「紙石鹸」に喩えて詠んだ。
(写真④蝋梅)
蝋梅は、ロウバイ科ロウバイ属の落葉広葉低木。中国原産で日本には17世紀頃に渡来。12月末から翌3月中ごろにかけて黄色い花を付ける。基本種(写真④~⑤)は花の中心部が暗紫色。中心部も黄色のものは「素心蝋梅(そしんろうばい)」(写真①~③)という栽培種。
蝋梅という名前は、「蝋細工のような、梅に似た花」からつけられたいわれるが、異説として中国の陰暦の12月にあたる臘月(ろうげつ)に、梅に似た花を咲かせるところからつけられたという説もある。このことから俳句では「臘梅」と書くことも多い。
尚、名前に梅がついているためバラ科サクラ属の梅の一種と誤解されやすいが、植物学的には全く関係ない。別名でカラウメ(唐梅)、ナンキンウメ(南京梅)ともいう。
(写真⑤蝋梅)「蝋梅」あるいは「臘梅」を詠んだ句は多く、本ブログでも何句か紹介したことがあるが、以下ではそれ以外のものを掲載した。
【蝋梅(臘梅)の参考句】
蝋梅や枝疎なる時雨空 (芥川龍之介)
臘梅を無口の花と思ひけり (山田みづえ)
臘梅の蕾の数が花の数 (倉田紘文)
臘梅や水に入る巌うつくしき (長谷川櫂)
蝋梅の香が勝つてをり初稽古 (佐々木六戈)
(写真⑥蝋梅)