■ 足ることを知れば安心実万両
( たることを しればあんしん みまんりょう )
好みは人それぞれだろうが、自分は、万両の方が色や形に落ち着いた風情があり、より好ましいと思っている。そんな万両を見て、今回ふと思い浮かんだ言葉が「知足」という言葉。
「知足」とは「足るを知る」、すなわち「分相応のところで満足する」という意味だが、本日の掲句は、それにかけて詠んだ。
実際に「万両」ものお金を得ることができれば、満足するのは当然と思われるかもしれないが、この句の句意は、植物の「実万両」を見て足ることを知れば、心安らぐ=安心だということ。「実万両」は「万両」「万両の実」とともに冬の季語。
ところで、万両とは、現在のお金に換算するとどれくらいなのか。かつて調べたところによれば、一両がおよそ10万円~30万円。だから万両は10億円~30億円ぐらいになる。
【関連句】
① 千両も万両もある古刹かな
② 万両もあれば何する実万両
①は、今回と同じ寺の情景を詠んだ句。②は、お金で万両あれば何をするだろうと詠んだ句。自分の場合は、せいぜい家を建て替える、世界旅行をするぐらい。とても使いきれず、むしろ持っている方が不安になるだろう。
名前は、「千両」よりも実が重いから葉の下に実がつき、しかも沢山なるということでつけられたと言われている。(異説あり)名前がめでたいので、「千両」とともに正月の縁起物とされている。
【万両等の参考句】
万両の実は沈み居る苔の中 (高浜虚子)
万両やつねのこころをたひらかに (森澄雄)
万両を木伝ふ雨となりにけり (清崎敏郎)
万両の下まだ濡れずしぐれをり (福永耕二)
抱くたびに子の言葉増え実万両 (野田禎男)