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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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鵯が来てひょいと喰いけりクロッカス

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■ 鵯が来てひょいと喰いけりクロッカス
                               ( ひよがきて ひょいとくいけり くろっかす )

先日植物園のある一画で、黄色のクロッカスが沢山咲いているのを見た。丈があまり高くなく、花が敷き詰められた感じだった。早速、その情景を写真に何枚か撮ったが、ふと少し離れた所を見ると一羽の鳥が見えた。

イメージ 1姿形から見て鵯(ひよどり、ひよ)のようだが、少し
様子を見ていると、花の間に入って花をひょいと咥え、すっと呑み込んだ。そして、辺りを一度見渡しながら少し歩いて、また花を咥えて呑み込んだ。繰り返すこと5、6回にてどこかへ消え去った。

本日の掲句は、そんな景を見て詠んだ句である。鵯がクロッカスの花を食べるなんて見たことも聞いたこともなかったので少々吃驚(びっくり)した。
後で調べてみると、鵯はパンジーやシクラメンなどの花も食べるようで、それほど珍しいことではないとのこと。もともと口が卑しいということで「卑」+「鳥」の漢字が当てられたという説もある。

尚、本句では「クロッカス」が季語で季は春。ところが、「鵯」も秋の季語になっていることを後で知った。だから本句は「季違い」の季重なりになるのだが、「鵯」を単なる「鳥」にすると面白みがないのでこのまま残すことにした。

こういう場合は、一般的には季節が限定される季語(本句ではクロッカス)を優先するとされているが、それを受け入れないところもある。

ところで、「花を喰う」と言えば思い出す句に、松尾芭蕉の以下の句がある。

      道のべの木槿は馬に食はれけり   木槿(むくげ)

この句の評価にはいろいろなものがあるが、代表的な評としては、山本健吉の「この句の面白さは、単なる写生句としてでなく、馬上の芭蕉の軽い驚きがあらわされているところにある。」というのがある。掲句とも幾分重なるところがある。

イメージ 2話は戻って、クロッカスに関しては、過去に以下の句を詠んだ。

      【関連句】
       ① 紫も黄色も白もクロッカス
       ② クロッカス心も軽くクロッカス

①は、紫色、黄色、白色(薄紫)など様々な色のクロッカスの花が、かなり広い範囲で群生しているところを見て詠んだ句。クロッカスの黒にかけ色をざっと並べた。②は、クロッカスという花の名前の響きに着目して詠んだ句。真ん中の促音「ッ、っ」が、春の陽気にあわせて、非常に軽やかな感じがする。

イメージ 3クロッカスが俳句に詠まれるようになったのは昭和に入ってからだそうだ。以前にも何句か紹介したことがあるが、以下にはそれ以外の句をいくつか掲載した。

      【クロッカスの参考句】
        紫の心を掠めクロッカス         (後藤夜半)
        クロッカス咲き終りたる日向かな    (成瀬正俊)
        忘れゐし地より湧く花クロッカス    (手島靖一)
        クロッカス黄に日溜りの陽を吸へり   (山本満義)
        忽然と地から湧き出すクロッカス    (安井やすお)

イメージ 4

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