■ 時雨るるや山は呆けて眠げなり
( しぐるるや やまはほうけて ねむげなり )
京都は比較的雨が少ないので助かっているが、昨日は朝から雨だった。そんなに大降りでもなく、しとしとと降ったりやんだりの雨だが、こういう雨をたぶん時雨(しぐれ)というのだろう。
ところで「山眠る」という言葉は、北宋の画家・郭煕の言葉で、一般に出典は南宋の呂祖謙の「臥遊録」だとされている。これまで、何度か本ブログでも紹介したが、言いえて妙なので以下に再掲しておきたい。
春山(しゅんさん)淡冶(たんや)にして
笑うが如く、
夏山(かさん)蒼翠(そうすい)として
滴(した)たるが如し、
秋山(しゅうさん)明浄(めいじょう)にして
粧(よそお)うが如く、
冬山(とうさん)惨淡(さんたん)として
睡(ねむ)るが如し
笑うが如く、
夏山(かさん)蒼翠(そうすい)として
滴(した)たるが如し、
秋山(しゅうさん)明浄(めいじょう)にして
粧(よそお)うが如く、
冬山(とうさん)惨淡(さんたん)として
睡(ねむ)るが如し
これらは、季節の移ろいに応じて山をいかに描くかを説いたものだが、それから引用し、春は「山笑う」、夏は「山滴る」、秋は「山粧う 」、冬は「山眠る」が俳句の季語となっている。
因みに掲句の季語とした「時雨」は、松尾芭蕉が好んで詠んだ季題とも言われ、彼の命日(陰暦10月12日)は「時雨忌」と呼ばれている。その代表的な句としては以下のものがある。
初しぐれ猿も小蓑をほしげ也
本日の掲句が、言葉の使い方において、この句に酷似していることは後で気が付いた。
過去に自分が詠んだ「時雨」の句は少なく、以下の一句のみである。
黒光る石のきざはし朝時雨
これは、近くのお寺に行った時に詠んだ句で、不定型な石を並べた石段が、しっとりと雨に濡れて黒く光っていたのが印象的だった。きざはし(階)は階段のこと。
時雨の句は、芭蕉意外にも沢山の俳人が詠んでおり、以前にも本ブログで何句か紹介したことがある。以下では、それ以外のものを何句か選んで掲載した。
【時雨、時雨るの参考句】
時雨るるや泥猫眠る経の上 (夏目漱石)
天地の間にほろと時雨かな (高浜虚子) *天地(あめつち)
時雨るるや又柿の葉の土に散る (原石鼎)
山茶花の蕾そろひぬ初時雨 (山口青邨)
街道や時雨いづかたよりとなく (中村草田男)
時雨るるや泥猫眠る経の上 (夏目漱石)
天地の間にほろと時雨かな (高浜虚子) *天地(あめつち)
時雨るるや又柿の葉の土に散る (原石鼎)
山茶花の蕾そろひぬ初時雨 (山口青邨)
街道や時雨いづかたよりとなく (中村草田男)