■ 暗がりに金の炎か冬蕨
（ くらがりに きんのほのおか ふゆわらび ）
先日、植物園の森を歩いていたら、木の陰で金色に光るものを見た。
そのまま時を経て、いつも訪問するブログでその花の名前が「フユノハナワラビ」であることを知った。更に調べていくと俳句では、「冬蕨」「寒蕨」「花蕨」などと呼ばれ、歴とした冬の季語になっていた。
本日の掲句は、そのことを知り詠んだ句である。見た印象をそのまま中七に「金の炎」と表現した。下五は当初「花蕨」にしていたが、春の季語の「蕨」と混同される恐れがあるため「冬蕨」に変えた。
フユノハナワラビ（冬の花蕨）は、ハナヤスリ科ハナワラビ属の冬緑性シダ植物で、日当たりの良い土手、畦、草地などに生育する。夏は枯れ、冬になると高さ三十～四十センチになる。
葉は二種類あり、一つは普通の栄養葉、他は先に黄色い粟粒状の胞子をつける胞子葉となる。胞子葉の上部につく胞子嚢穂は２回～３回羽状に分岐し、円錐状に丸い胞子嚢をつけ、秋に熟した後に枯れる。 この胞子嚢が花のように見える。
似たものにオオハナワラビやアカハナワラビがある。３つの違いは栄養葉の様子により、フユノハナワラビは葉の先（鋸葉）が鈍頭だという説明があったが、正直よく分からない。
ひょっとしたら、写真のものは「オオハナワラビ」かもしれないが、俳句ではそれほど厳密に考えないので、まとめて「冬蕨」ということでご容赦いただきたい。
尚、参考句としては、「冬蕨」で詠まれたものをいくつか掲載する。
ことごとくユダヤの土上冬蕨 （齋藤玄）
冬蕨「樹下の石仏」我と逢ふ （森澄雄）
夢見るか夢見しあとか冬蕨 （青柳志解樹）
冬蕨日に反るや日を抱けるや （宮坂静生）
風韻の人おもふべし冬蕨 （飴山實 ）