■ 静けさやお堂に光る石蕗の花
( しずけさや おどうにひかる つわのはな )
本日の掲句は、先日、ある寺の御堂のそばで咲いていた石蕗の花を見て詠んだものである。早朝のせいもあり、人もまばらで時折小鳥の声が聞こえるだけだった。「石蕗の花(つわのはな)」「石蕗(つわぶき)」は冬の季語。
ところで、この花に対する見方は人によりかなり違うようだ。花の少ない冬にあって、明るく、華やかな花と思う人もあれば、陰気で、寂しい花だと感じる人もいるようだ。従って、同じ情景を見ても句の詠み方が違ってくるし、句の鑑賞の仕方も自ずと変わってくるものと思われる。
因みに、石蕗に関しては、過去には以下の句を詠んでいる。
① まるき葉の蔭より出でし石蕗の花
② 石垣にぬっと突き出る石蕗の花
③ 石蕗や解体工事の音止まず
石蕗は、キク科ツワブキ属の多年草である。原産地は日本、中国など。花期は10月中頃から11月末頃。名前は、葉が蕗(ふき)に似ていて艶があることから「艶葉蕗(つやばぶき)」となり、それが転じて「つわぶき」となったそうだ。(異説あり)
日陰でもよく育ち、園芸植物として、日本庭園の石組みや木の根元などに好んで植えられる。
尚、蕗(ふき)もキク科だが、フキ属に分類され種類が違う。蕗やその花芽の蕗の薹(ふきのとう)は代表的な山菜として知られているが、石蕗も冬から春にかけて、若葉をつみとって塩ゆでにするとおいしいらしい。九州名産の「佃煮キャラブキ」は、この石蕗の葉っぱで作られるそうだ。
冬に咲く花は少ないだけに、石蕗(つわ、つわぶき)の花を詠んだ句は非常に多い。以下では、いくつか参考になる句を掲載する。
静かなる月日の庭や石蕗の花 (高浜虚子)
石蕗の黄に心せかるる何やかや (阿部みどり女)
地軸より咲きし色なり石蕗の花 (原石鼎)
滝落つるところに石蕗の黄ありけり (久保田万太郎)
石蕗の花突き出してをる日向かな (清崎敏郎)