■ 白壁のカフェに絡まる蔦紅葉
( しらかべの かふぇにからまる つたもみじ )
この建物は個人の邸宅として1982年にヴォーリズ建築事務所によって建てられたそうだ。後に1階でアンティーク品を扱う「迷子」という店、2階で「GOSPEL(旧OTENBA KIKI)」という喫茶店の営業が行わるようになったとのこと。詳しいことは、ネットなどで検索して調べていただきたい。
ところで、蔦は、巻きひげの吸盤で樹木や壁を「伝(つた)って」伸びる。そのことから名前が「つた」になったと言われている。ただ、絡まるもの、張り付くものによっていろいろな形になり、しかも色づき方も一様ではない。時には、思いもよらぬ美しい光景を作る。
これまでも、その時々の様子やそれを見て感じたことを句に表してきた。本ブログでも何度か掲載したことがあるが、そのいくつかを以下に再掲したい。
尚、以前掲載した句を何度も繰り返し掲載するのは、自分が詠んだ句を自分なりに再評価するためでもある。良くないと思うものについては、修正あるいは改作をして掲載している。
【関連句】
① 古びれた板塀飾る蔦紅葉
② 壮麗なタペストリーかな蔦紅葉
③ 街に出てさみしくないか蔦紅葉
④ シャンソンを奏でる如く蔦紅葉
① 古びれた板塀飾る蔦紅葉
② 壮麗なタペストリーかな蔦紅葉
③ 街に出てさみしくないか蔦紅葉
④ シャンソンを奏でる如く蔦紅葉
①は、古い家の板塀に張り付いた数本の蔦が、薄っすらと紅葉している様子を詠んだ。②は、ある家の外壁を覆っている蔦紅葉を、重厚なタペストリー(壁掛け)に喩えて詠んだもの。
③は、蔦の「つた」から「伝える」を連想して作った句で、さだまさしの「案山子」のワンフレーズを引用したもの。④は、真っ赤に紅葉した蔦が、あるレストランの前の土塀に楽譜のような模様を形成し、シャンソンを奏でているように見えたことを詠んだ。
蔦は、ブドウ科ツタ属のつる落葉低木。夏に、小さい黄緑色の花が咲き、秋に、黒紫色のぶどうに似た実がなるが、 どちらかというと葉の方が好まれる。夏は緑のカーテンを作り、秋は艶やかに紅葉して、「蔦紅葉」と呼ばれ愛でられている。
【蔦紅葉の参考句】 一筋は戸にはさまれて蔦紅葉 (正岡子規)
くづれたる煉瓦の塀や蔦紅葉 (寺田寅彦)
蔦紅葉濡れしは今かしぐれけむ (水原秋桜子)
蔦紅葉けなげに登りつめにけり (阿波野青畝)
吊橋をがんじからめに蔦紅葉 (猿橋統流子)