■ とうがらし甘そに光るものもあり
( とうがらし あまそにひかる ものもあり )
先日、植物園に行った時に、色とりどりの唐辛子(とうがらし)の実がなっているのを見た。唐辛子と言えば、あの真っ赤な実の辛いものをイメージするが、そこで見たものは、赤色だけでなく、クリーム色、黄色、オレンジ色、緑色、紫色など様々。
言うまでもないが、植物園で見た唐辛子は、観賞用に栽培されたものである。見た目は甘そうでも、やっぱり辛いそうだ。また、実の形も細長く尖ったものや丸いものがある。観賞用の唐辛子は江戸時代からあるそうで、「五色唐辛子」などが有名。
唐辛子は、ナス科トウガラシ属の多年草(日本では一年草)。原産地は南アメリカから北アメリカにかけての熱帯地域。花期は6月~8月で白い花をつける。7月~11月頃に結実し、その果実は香辛料または野菜として食用にされる。
唐辛子は「唐」+「辛子」と書くために唐=中国からの伝来と思われがちだが、唐という漢字は漠然とした「外国」を現したもので、実際は、16世紀中頃にポルトガル宣教師がキリシタン大名に献上したのが最初と言われている。そのため「南蛮辛子(胡椒)」、略して「南蛮」とも呼ばれていたとのこと。
また、食用として利用されるのはかなり後で、最初は観賞や足袋の中に入れて霜焼け避けにしていたそうだ。因みに「七味唐辛子(しちみとうがらし)」は、唐辛子の粉末に、山椒の実・胡麻の実・陳皮(ちんぴ:みかんの皮を干したもの)・麻の実・芥子の実・菜種・生姜・紫蘇などを合わせたものである。
唐辛子を詠んだ句は意外に多い。以下では、その中から幾つか選んで掲載した。
【唐辛子の参考句】
青くてもあるべきものを唐辛子 (松尾芭蕉)
辛辣の質にて好む唐辛子 (高浜虚子) *辛辣(しんらつ)*質(さが)
炎ゆる間がいのち女と唐辛子 (三橋鷹女)
今日も干す昨日の色の唐辛子 (林翔)
唐辛子地の影剛くなりにけり (石原八束)