■ 暮れの秋げそにも見ゆるたこの足
( くれのあき げそにもみゆる たこのあし )
実はこの句は、写真に掲載した「蛸の足(たこのあし)」という名前の植物を紹介するために敢えて作った句である。
写真を見ればお分かりいただけるように、この植物は、花から実になり紅葉すると茹で蛸の足のように見える。名前は、それに由来するのだが、先日初めて植物園で見た時は、イカの足の「げそ」のようにも見えた。
掲句は、その印象をそのまま句にしたもの。植物を紹介するために作った句なので、季語はあまり気にする必要はないと思ったが、せっかくなので、晩秋のことをいう「暮れの秋」を上五に置いた。
少々寒くなってきたので、げそ焼きを肴に晩酌するイメージを浮かべながら読んでいただければと思う。
ところで、イカの足を何故「げそ」というのか。ことの序(ついで)に調べると、以下のような説明があった。
「げそ」とは、もともと下足(げそく)、すなわち人が脱いだ履物を指す言葉だったが、人間の足そのものも下足、更に略して「げそ」と呼ぶようになった。その後、寿司屋の店主がイカを刺身にする際、イカの胴体に対して触手のことを「イカの足」、更には「イカのゲソ」と呼ぶようになり、次第に一般にも定着していった。
今は、げそ焼き、げそ揚げ、げそ丼など、料理名にも結構使われている。
植物の「蛸の足」は、タコノアシ科タコノアシ属の多年草である。(かつては、ベンケイソウ科ないしはユキノシタ科に分類されていた。)原産地は日本(本州以西)、中国。
草丈は30センチから100センチくらい。開花時期は8月から9月で、穂状に黄白色の小さな花(約5mm)をたくさんつける。秋には、実も茎も葉も赤くなる。別名を沢紫苑(サワシオン)という。
かつては沼や河原などの湿地に自然に生えていたが、今はかなり減少しているとのこと。