■ 見渡せば川辺あまねく泡立草
( みわたせば かわべあまねく あわだちそう )
先日鴨川を散策した時に、あることに気が付いた。それは、川岸に咲いている花が、全て背高泡立草((せいたかあわだちそう)だということである。
本日の掲句は、そんな様子を詠んだ句である。「背高泡立草」は秋の季語。名前が長いので「泡立草」と短縮して詠まれることも多い。
*あまねく:もれなくすべてに及んでいるさま。
因みに、過去には以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 背高でいかす黄色の泡立草
② 草叢に未だ背は低き泡立草
①は、秋の野にあって、背が高くていかした感じの、黄色い花を咲かす草花として詠んだ。「いかす」とは、1960年代に、「かっこいい」という意味で石原裕次郎が使った言葉で流行語になった。
②は、ある公園の草叢に、まだそれほど背が高くない泡立草を見て詠んだ句。「背高泡立草」の「背高」にかけて詠んだ。
背高泡立草は、キク科アキノキリンソウ属の多年草。北アメリカ原産で明治時代末期に切り花用の観賞植物として導入された。高さは通常1m~2.5mぐらいになるが、良く肥えた土地では3.5m~4.5mにもなるそうだ。
花期は10月~11月。群生している情景は、黄色が映えて見ごたえがあるが、その繁殖力の強さは半端でなく、密集した花からできる大量の種子を四方八方に飛ばして新天地を開拓し、地下茎を伸ばして勢力を広げる。更に、地下50cmぐらいまで根を張り、毒素を分泌して他の植物を枯らし、駆逐してしまう。
そんな訳で、一時世の野原は全て背高泡立草に席巻されそうな気配だった。しかし、自らが分泌した毒素(アレロパシー)の影響で、土の中にいるモグラやミミズなど、土地を豊かにしてくれる動物や昆虫たちまでも駆逐され、最近では、肥料となる成分不足などで自滅を始めたとも言われている。
そして、背高泡立草の勢いが衰えてきた土地では、芒などの植物が再び勢力を取り戻しつつあるそうだ。現在見ている情景は、どうもその途中ということのようだ。
【背高泡立草の参考句】
忘れゐし空地黄となす泡立草 (山口波津女)
目のうちにそとにせいたか泡立草 (岸田稚魚)
泡立草くらくら晴るる丘の上 (上野美智子)
沼を吹く風を黄色に泡立草 (和知喜八)
風遊ぶ休耕田の泡立草 (土屋みね子)
忘れゐし空地黄となす泡立草 (山口波津女)
目のうちにそとにせいたか泡立草 (岸田稚魚)
泡立草くらくら晴るる丘の上 (上野美智子)
沼を吹く風を黄色に泡立草 (和知喜八)
風遊ぶ休耕田の泡立草 (土屋みね子)